コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: まるで磁石【参笑700いったー!! うれしーい(泣)】 ( No.188 )
- 日時: 2013/03/21 15:26
- 名前: 春歌 (ID: cakHq5Qm)
いま謝って、明日から、また……。
そんな思いが強くなった。藤村くんに、勇気づけられたことも、背中を押している。
メールのあて先を『ルミちゃん』にして、メールの作成画面を開くと、フレディからのメールがきた。
”まなみ”
心配してくれているのかな? この間も、心細くなったときに、一緒にいてくれた。
「おお、心配いらんよ、フレディ! ルミちゃんにメール送っていい?」
元気な声を出す。
あたしは大丈夫だよ、フレディ。心配しないで。
”よかった、でもね”
「……でも?」
どうしたんだろう? 少し、嫌な予感がした。
そうじゃないとしたら……。
”ルミは、へんしんが、おそくなる、かも”
「え……?」
不安が、顔を覗かせる。やっぱり、戻れないのかな……?
”おくってって、いうまで、まなみ、メール、まって”
「う、うん」
大丈夫だよね? 大丈夫。
自分に言い聞かせていると、それを察したかのように、フレディはメールをよこした。
”だいじょうぶ、だよ”
〜ルミ〜
優秀って、なによ。
あたしは……優秀なんかじゃ、ない。
知らないうちに、泣いていた。誰にも顔を見られたくなくって、結局、学校を出てから、走ってしまった。
「おかえりー」
しまった、あの人、仕事休みなんだ……。
家に帰ったら、さとにぃがいて、その声も、無視。
全力で階段を駆け上がり、自室に潜り込んだ。ベットの毛布をかっさらって、頭からかぶり、部屋の隅に落ち着いた。
「ルミー? どしたの?」
のんびりした声が、階段をゆっくりとあがってくる。
その足音は、あたしの部屋の前で、ぴったりと止まる。
「さとにぃのこと、入れてくんないかなぁ……?」
間延びした声に、腹立たしさを覚えて、つい、やつあたりをしてしまう。
「うるさい!」
本当は、すごく聴いてほしいのに……。素直じゃない自分にも、イライラする。
もう、何でこんなに……。
「けんかしたんだなぁ? その口調だと。ルミがトゲトゲしてる時って、何かに傷ついた時なん
だけど。俺の予想は、外れてる?」
……図星。
「入るよー」
そして、勝手に入ってくる。もしかして、聴いてほしいってことも、わかってたのか?
「さあ、何があったのかな? 学校で。ん? なに? 真奈実ちゃんとけんかしただって?」
つくずく、恐ろしい居候だと感じる……。
あたしは、さとにぃに背中を向けた。さとにぃは、あたしから距離を置いて、正座をする。
「物語、作っちゃうよー? なになに、真奈実ちゃんと好きな人がかぶって——」
「違う!! 口げんかしただけ!」
慌てて遮ると、ふっと笑ったような気配がした。
思惑に、すっぽりはまってしまったようだ。地団駄を踏みたい気分になる。
「それで?」
完全に、あっちのペースに包まれる。
声を不機嫌にして、仕方なくしゃべっていることを、アピールする。
「悪口、いっぱい言った。でも、真奈実だって悪い」
「真奈実だってってことは、ルミも悪いってことだね」
……だって。
あたしとルミちゃんの考え方は、違うって言われたんだもん……。
押し付けたかなって思ったけど……。
真奈実が何もしようとしないから、親切心でやったら、逆ギレだよ?
それって、なくない……?
それに……。
「優秀だねなんて……あたしだって、いっぱい努力してるのに、才能みたいに言うから……」
あたしだって、意地を張っているだけだって、わかっているけれど……。
「なるほどね。いちばん仲のいい友達には、わかっててほしかったと。それで、傷ついたんだね」
「……うん」
それが、あたしの性格だから。
「……ルミらしいね」
本当にさとにぃには、あたしのこころの中が、見えている気がする……。
振り向くと、さとにぃが立ち上がって、あたしに近づいてきた。
あたしの前にしゃがみこむと、笑いながらあたしのほっぺたに触れる。
な、なに!?
やばい、ドキドキする……! 早く離れてっ!!
触れたと思ったら、そのままほっぺたを潰されて、
「むにゅ」
なんて、変な効果音までつけられる。マジで恥ずかしいからーー!!
「ルミ。自分にも非があるなら、おあいこだよ。真奈実ちゃんにもそれなりの言葉、必要なんじゃないの?」
まじめな顔で言われて、素直に頷く。
これも、あたしの性格が完全にわかっている証拠だ。絶対に自分から、謝らないこと……。
「ふぁい……」
「ちゃんと、言葉にしなよ」
そう念が押されて、手が離れる。その手が今度は、ぽんぽんと、頭をなでた。
ほっぺたが、熱を帯びている。さとにぃの顔が、まともに見られない。
「じゃ、今日の夕食は、俺が作っといてあげるから。……ルミも一緒に作る?」
恥ずかしいから、少し、火照った顔のクールダウンの時間がほしい。
「後で行くよ」
そう答えると、さとにぃは何事もなかったかのように、
「そ、じゃあ、おいでね。今日は、中華にしようか」
と言った。実際、さとにぃからしたら、大したことないんだと思うけど。
「うん」
さとにぃが、部屋を出て行く。
足音が遠ざかってから、はぁ、とため息をついた。心臓のドキドキが、止まらない。
ほっぺたが、無遠慮に赤くなっていく。
体は、本当に正直だ。
何度か息をついて、なんとか体温を下げる。
キッチンに出向こうと立ち上がったとき、玄関から、さとにぃの声がした。
「ルミー。真奈実ちゃんだよー!」
心臓が、跳ね上がる。
こころの準備が、できてないよ……。
ゆっくりと部屋を出る。
ドキドキは、マックスに達していた。