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Re: まるで磁石 ( No.20 )
日時: 2013/02/23 00:56
名前: 春歌 (ID: cakHq5Qm)

りいほさん、作者のテンション上がります(笑)
ありがとうです!


では、本文↓


「最近、調子いいなって、思ってたんだけどさ…」

声は小さくて、震えていた。

「…夢、見ちゃって。…対処できなくなって…」

ルミちゃんの表情は、俯いてて、見えない。

でも、泣いていた。

「もう、大丈夫だって、わかってるけど…、でも…」

あたしは、ルミちゃんに、そっと近づく。
丸まった小さな背中に、そっとふれて、さすった。




2年前。
あたしとルミちゃんは、ひどいいじめに遭っていた。

クラス替えをして、あたしとルミちゃんが仲良くなった矢先に、起こったことだった。


そのとき、ルミちゃんは、1度だけ泣いた。

よく、覚えている。

夕日が差し込む、放課後の教室。

夕焼けの赤に、バケツの水色を、鮮明に思い出す。

教室の片隅で、ふたりで水を浴びた。その時、今と同じような体勢で、ルミちゃんは泣いた。
声を押し殺して、泣いていた。

「なんでだよ、なんで……」

ルミちゃんは、この理不尽な状況に、怒りや、悲しみ、悔しさをぶつけていた。びしょ濡れのこぶしを握りしめて。

あたしは、ルミちゃんの背中をさすることしかできなかった。
なんの感情も持たずに、ただ時が過ぎるのを、待っていただけだった。

思い出したくもない、放課後。





「今でも、ちょっと、疑う。みんな、あたしのこと、きらいかもって…どんなに明るくなっても…無駄なんだって」

「…そんなこと、ない」

「でも、自信なくて…」

あたしは、ルミちゃんを抱きしめた。

「そんなこと、ないって」

大きく、かぶりを振る。大丈夫だって。

「ありがと、真奈実」

ルミちゃんの目からこぼれた涙が、肩にあたる。

視界がぼやける。
あたしが、泣いたら駄目だ。

あたしは、ルミちゃんの、力にならなきゃ。

フレディがそうやって、教えてくれたから…。


今日は、ふたりで学校を休んだ。

1日中、ルミちゃんの元気が出るまで、ずっと一緒にいた。

ふたりでたくさんお喋りをして、夕方には、家に帰った。

少しだけ元気になったルミちゃんは、いつもの調子と笑顔を、取り戻しつつある。



家に帰ると、フレディから、メールがきていた。

”がんばれ”

たったの4文字が、あたしにたくさんの感情をもたらす。

胸がいっぱいになる、とは、このことを言うのだろう。

あふれる言葉を口にするには…

「ありがとう、フレディ」

まだまだたりないけど。もっともっと、いろんなこと、伝えたいけど。

「これからも、よろしくね」

あたしは、フレディを大切に両手で包んだ。