コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: まるで磁石【参笑800!! ヽ(;▽;)ノありがとーう!】 ( No.219 )
- 日時: 2013/03/25 10:47
- 名前: 春歌 (ID: cakHq5Qm)
キッチンに入ると、料理をするいいにおいがした。
てきぱきと動くさとにぃは、動きながら、あたしとルミちゃんに言った。
「ささ、作って! 80個あるからねー! ひとり30個くらいがノルマかなぁ。俺はこっち先つくるから」
なんか、すごい……レストランの人みたいに動くよ、さとにぃ。
ボケッと突っ立っていると、ルミちゃんが背中を押した。
「真奈実! 圧倒されるなっ!! 手ぇ洗って!」
「は、はい!」
る、ルミちゃんまで……。
あたしは、この厨房でいうと、新米?
さすがに、ルミちゃんは慣れていて、もうぎょうざをつくりはじめていた。
あたしも急いで手を洗って、ルミちゃんに従う。
「ルミちゃん、あたし、できないよー」
半泣きで立っているあたしに、鬼先輩みたいな声が飛ぶ。
もう5個ぐらいできてるよ……。
「真奈実、できなくてもやるの!! あたしが教えるから」
っていうか、ぎょうざつくりって、もっとわいわい楽しくやるんじゃないのー!?
ルミちゃんにレクチャーしてもらって、やっとひとつ作る。なんか、具が飛び出してるよ。
皮のクシャってするところは、難しい……。
「真奈実、具、多すぎ! 半分にして」
「はいっ!」
って、何の修行だ、これは。
やっと安定して作れるようになったとき、ルミちゃんに訊いた。
「ルミちゃん、いっつも夕食作ってるの?」
「うん。4月くらいから、親の仕事が急に忙しくなって。前までは、ひとりで作ってひとりで食べてた」
前までは……つまり、さとにぃが来るまでは。
ルミちゃんの両親は共働きだ。仕事が忙しくなると、家にいる時間も、休みも少なくなる。
だから、この家の家事はルミちゃんがしていた。
つくっても、夕食はひとりって、きっと、すごく寂しいと思う。
それでも今は、自分が作った料理を、おいしいと言って食べてくれる人がいる。
ひとりで食べるより、ずっと寂しくないのは、明らかだ。
あ、でも……。あたし、邪魔じゃないかな……。こころの声が聞こえたかのように、ルミちゃんは言った。
「でも、今日は真奈実もいるから。全然さびしくなんかないよ」
そんなふうに、思ってくれて……。ルミちゃんからそんなふうに思われる友達で……。
あたしはすごくうれしくなって、少しだけ照れた。
下を向いていて、ルミちゃんの顔はよく見えないけれど……ルミちゃんの頬は、少しだけ赤いきがした。
「って言うか、さとにぃってほんとによく食べるんだね……」
いつもの屋上。梅雨真っただ中なのに、今日は晴れた。太陽が強い。
美術室の藤村くんは、見れないけれど……。
「家賃を食費にするような人だから」
さとにぃがどんだけ食べたのかは、ご想像にお任せする……。
これでまた、いつもの日々がもどってくる。