コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: まるで磁石【参笑1100!! 2000まであと900!!】 ( No.279 )
- 日時: 2013/04/01 20:06
- 名前: 春歌 (ID: cakHq5Qm)
ぼくには、光と音を感じることができる。
まなみたちのは発する声、まなみの世界の音は、全て感じることができる。そして、それ以上のぼくたちの世界の声も、聞こえる。
「ルミちゃん、おはよう!」
まなみの元気な声が聞こえた。
「おはよー」
眠そうなルミの声。朝から弁当作ってるなら、なおさらだ。
まなみも見習えよぉー。
「学校行こー!!」
「ふぁあ……眠いよー……」
まなみとルミが話すなか、ぼくにはもうひとつの声が聞こえる。
”あなたの飼い主さんは今日も元気ね、フレディさん?”
これが、ぼくらの世界の声。この声は、ルミのスマホの声、榎本さんだ。
からかい口調なのは、ぼくに名前があるから。
”いいだろ、名前があったって。ぼくは気に入ってるよ”
”あたりまえよ。フレディって、もとはルミ子がつけた名前よ?”
”だったら、榎本さんもつけてもらえば?”
ぼくらの世界では、携帯電話の持ち主の苗字で会話をする。ルミは榎本ルミ子だから、ルミのスマホは榎本さんと呼ばれている。
ぼくに名前がなければ、鈴江って呼ばれるはずだった。でも、ぼくにはまなみがつけた立派な名前がある。
”ルミ子はそういうキャラじゃないわ”
うーん、確かに、ルミはスマホを大事にしても、名前をつけてかわいがる姿は……想像できない。
”そうかもね”
”うん、あなたの飼い主さんは、素直よ”
まなみは、ものを大切にするこころが前面にあらわれる。ぼくは、そんな飼い主さんに拾われた。
もちろんきっと、恋にも直球なんだと思う。
”聞いてると、みんな言うよ。ルミもそうなんじゃないの?”
これは、いつもの屋上の話を、榎本さんとぼくで聞き耳を立てているからだ。
”もう一押してもいいと思うのよ”
榎本さんは、ルミをそう評した。ぼくらの世界に歳はないけれど、榎本さんはそういう性格をしている。
大人っぽいって、こういうことをいうらしい。
”もう一押しって?”
”もっと周りに、甘えてもいいと思う”
”でも、ルミはそんな性格じゃないかもよ?”
”そこなのよ、問題は”
なにが問題なの……?
女の子の世界って、よくわからない。
恋だの愛だの、ぼくにはまだ早いってことなのか?
なんだか、めまいがしちゃうよ……。
そうこうしているうちに、学校に着いたらしい。
たくさんの声がざわざわとポケットのなかまで聞こえてくる。
騒ぐ声、走る足音……ぼくのなかに響く。
そして、いつものこの声が聞こえる。
”おお、フレディ! おはよう!”
”うん、おはよう”
この声は……。