コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: まるで磁石【参笑1200!! 2000まであと800!!】 ( No.303 )
- 日時: 2013/04/05 18:20
- 名前: 春歌 (ID: cakHq5Qm)
今日のランチも屋上らしい。
ポケットの外に出されたぼくたちは、眩しい。
「はい、まなみ!! 笑えっーー!!!」
不意に、ルミの声が聞こえて……。
「ふぇっ?」
カシャッ。
まなみはいつも、カメラに緊張して、写真にはどうにも変な顔でしか写っていない。
”……今日もだめね”
そんな写真を見て、榎本さんはまなみをザックリとさばいた。
”なんで、笑わないのかな……”
ルミはきまぐれに、まなみの写真を、榎本さんで撮ったりする。
その写真をふたりで見て、ため息をついた。
これじゃあ、まぶしい人みたいだよ……。
”真奈実の写真写りの悪さは、ピカイチね”
榎本さんは、あきれたように言う。
隣に写るルミは、極上の笑みだというのに。
「真奈実、この顔はないわ……」
「ひどいよー、そんなにはっきり言わなくてもいいじゃーん……」
ぼくは、まなみの笑顔を見たことがない。
ルミとしゃべるときはよく笑い声が聞こえてくるのに、写真に写るときはどうしても笑わない。
ルミいわく、武器になる笑顔らしいけれど、ぼくはその笑顔を一度も見たことがない。
ぼくは、そんなまなみの笑顔を、見たいと思っている。
”ねぇ、フレディ?”
”うん?”
”なんでそんなに、真奈実の笑顔にこだわるの?”
榎本さんに言われて、答える。
”まなみがどんなふうに笑って、ぼくに話しかけるのか、知りたいんだ”
”ふーん。でもそれが……”
”ん?”
榎本さんは言いかけて、やめる。
”……なんでもない”
”どうしたの?”
”いや、どうでもいいことよ。それよりさ、ほら、ふたりの話、聴いてみて”
”う、うん……”
なんか、へんなの。まぁ、いいや……。
ぼくは、榎本さんに言われたとおりに、まなみたちの会話に耳を傾ける。
「来週、藤村くんの大会だけど、なんかしないの?」
「え……。なんかって、なに…?」
「あるでしょ、いろいろ!! 激励の言葉とか、送んないの?」
「う、うーん……?」
煮え切らないまなみの返事。ぼくも、よくわからない。
「バド部のマネージャーの子、かわいい子しかいなかったけど……?」
「んん? どういうこと?」
”ね、ね、榎本さん、これってどう言うこと?”
”だから……っ”
榎本さんもルミも痺れをきらしたらしい。ため息をついて、一息で言い切った。
「ほんと、あんたってのん気だよね!! 大会前はいろいろ盛り上がって藤村くんにコクって来る子がいるかもしれないってこと!」
”ほんと、あんたってのん気だよね!! 大会前はいろいろ盛り上がって藤村くんにコクって来る子がいるかもしれないってこと!”
見事に重なる、ルミと榎本さんの声。
「え!? そんな子いるの!?」
”え!? そんな子いるの!?”
そして、見事に重なる、ぼくとまなみの声。
”ったく、鈍いったらありゃしない! 真奈実もあんたも!!”
”はい、ごめんなさい……”
おずおずと、謝るぼくに、榎本さんは続きを聞くように促す。
「いるかもよ。藤村くん、イケメンだから。なんかしないと取られるよ! 他の子に!!」
「うそ!?」
「最低限、メールくらい、送りなよー?」
「えー……、う、うん……」
女の子(ルミと榎本さん)の世界って、ほんとによくわからない。
でも、わかったことがひとつ……。
”わかった、フレディ? あんたのやること”
”うん。メールを送れと”
”はい、よくできました”
”それくらいわかるって!”
ぼくが、まなみの架橋になればいいってこと。