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Re: まるで磁石 ( No.347 )
日時: 2013/05/21 00:16
名前: 春歌 (ID: cakHq5Qm)



指導室の前は、人気が少ない。そこに近づくにつれて、まなみのふらふらの足音がより大きく聞こえるようになった。

力ないまなみの足音が止まる。

……着いたらしい……。

「……ぁ……はぁ……っ」

苦しそうな呼吸の音を聞くと、やはり限界寸前なのだと思った。

……もう、なんでそんなに無理してんのさ……。

こんなところより、まなみのこと助けてくれる人のところ、行こうよ。

……お願いだから……もう、無理だけはしないでくれ。

ぼくの願いも空しく。まなみは、指導室のドアをノックする。

コンコン……。

しかし、なんの返事も来ない。

まなみはもう一度、ノックをした。
弱々しいノックの音さえも、廊下に響く。

遠くから、すごく遠くから、生徒の声が聞こえるけれど。

まなみは、中に誰もいないことを確認すると、ぼくを取り出した。

「……あ、ふ、フレディ……。あ…りがと……」

やっと、気づいたの?

すかさず、メッセージを送る。

”まなみ、やすんで、おねがい”

ぼくの、心からの、全力のお願い。

だから早く、行こう。まなみのことを、助けてくれる人のところまで。

そう願った、その瞬間……!!

「……っ!」

まなみの苦しそうな呼吸が、止まりそうになる。


まなみ!?


ねえ、待って、なんで!? どうしたの!?


布と布がこすれるような音がして、ゴツンとなにかが床ぶつかる音がした。

……まなみが倒れたことを理解するのに、時間はかからなかった。


まなみ!!!!!



気づいた瞬間に、ぼくのなかで言いようのない感情が弾ける。

怖さと、不安と、怒りと、心配と、憎しみと、悔しさと…………

どっとあふれたものが、こころにずんずん押し寄せて、やがてまなみを失う恐怖が残った。


どうすればいい!?____


恐怖でいっぱいのこころをかかえながら、今朝の榎本さんの言葉を思い出した。

”今日は真奈実のこと、気にかけておいたほうがいいわよ___”


……ぼくしかいないから……


ぼくが、守らなきゃ


苦しそうなまなみのかたわらで、必死になって藤村に連絡を取った。