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Re: まるで磁石【参笑1900作者、頑張ります!】 ( No.356 )
日時: 2013/08/06 06:37
名前: 春歌 (ID: IPhHYvUG)

遅れてごめんなさい……

更新します!

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”フレディ……”

”……ん”

誰かが、ぼくのことを呼んだ。……榎本さん?

”起きた……?”

”……んん”

体の芯が熱い。考えるのがめんどくさい気分になる。

ぼくは、あの後、どうなったんだっけ……。

思い出せないでいた。

藤村を呼んで、その後……。どうしたんだっけ?

”充電切れよ。まなみと一緒に力尽きてたのよ、あんた”

榎本さんは、そういって笑った。

”悪かったね……、力尽きてて”

ふてたようにぼくが言うと、

”ごめん、ごめん”

と笑いながら言うので、ぼくはとうとうむっすりと黙り込むことを決めた。

黙り込んだぼくを気にすることなく、榎本さんは一方的に話した。

”真奈実が倒れて、あんたが藤村くん呼んで、かけつけたときにはもう、充電は切れてたけど……”

榎本さんは、笑わなかった。

”最初、真奈実のこと、保健室で休ませる予定だったんだよ。でも、あんたが充電切れなこと知ったとたんに「家帰る」って言い張って。なんでだと思う?”

一拍おいて……榎本さんが、笑った気がした。
いたずらが楽しい子どものような、そんな笑顔の気がする。

”あんたのこと、充電してあげたかったから”

……?

なんでぼく?

”知らない? 学校で充電するのって、違反なんだよ”

ああ、そうだった。と思い至る。

今は、学校に充電器を持ち込んで携帯電話の充電をする人は多い。
でもそれは、『電気を盗む』というれっきとした犯罪で、見つかった人は先生に取り締まられていたし、何より、まなみがあまりいい印象を持っていなかったのは確かだ。

”そういうの、したくなかったんだよ、真奈実は。フレディだったら、なおさら。携帯電話とはいえ、犯罪に巻き込むようなことしたくなかったのよ”

”でも……、そんなに急ぐこと、なかったのに”

ぼくがつぶやくと、

”わかってないわね、あんた”

榎本さんは鋭い声で突いた。

”それくらい、あんたは大事にされてるのよ”


まなみをお見舞いに来ていた榎本さんとルミは、帰っていった。

ぼくが気絶している間に、藤村と陽太も来ていたらしい。

まなみは少しだけいつもの調子で、

「ルミちゃん、ありがとね」

と言って笑った。

「明日くらいは休みなよ」

ルミは怖い声で念を押していた。

「わかってるって」

それに応えるまなみの声も、いつもの声になりつつある。



帰り際に、榎本さんはぼくに画像を送ってきた。

”るみ子が頑張ってた”

言葉すくなにそう言って、榎本さんが帰ったあとにこっそりと見た。

アングルがずれていたのは、ルミの頑張った証拠だ。

……写真は、まなみと陽太のツーショットで……。

まなみは、楽しそうに笑っていて、全然いつものへなちょこな笑顔じゃなくって……。

まなみの笑顔を、初めて見た。

優しくて、柔らかくて___想像以上の笑顔だった。

改めて、大好きだと思った。


”まなみ、だいすき”


ぼくが言うと、照れたような声でまなみは言った。

「フレディ、ありがとね」

今、この瞬間、まなみの笑顔はあの写真と同じ笑顔なのかな?

そう思うと、心が弾んだ。