コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ノンストップ☆days〜イタズラと悪魔は紙一重〜 ( No.9 )
- 日時: 2013/02/20 22:56
- 名前: 瀬野 こなみ (ID: DHfHPQAg)
episode2『邪魔モノとジャマ者 乱入!』
「と、まあ、そうゆうわけなのです。ヒナタ、ユズリハ、分かったですか?」
「…………」
「……あの…………」
突然の沈黙の中、楪がおずおずと手をあげる。
「はーい☆ ユズリハ!」
「あのお、意味が、さっぱりなんですがー」
「上に同じ!」
隣で兄のヒナタが即同意した。
「楪の言う通りだ。どーゆーことなんだよ」
今現在、ヒナタと楪の双子兄妹は、謎の少年少女と共に住宅街の外れにある公園にいた。
夜の公園である。
そこに正体不明の少年少女と四人きりである。
物騒極まりない。「お巡りさん、こっちです」レベルの状況である。
「どういうことって、君達は理解力というものがないのか。さっき言った通りのことだが」
謎の少年——織塚 拓巳(おりづか たくみ)は冷静にそう答える。
ヒナタはその言葉に納得がいかないと頭を振り、眉をひそめ、
「だからその話の内容がわかんねーから聞いてんだよ」
「何がどうわからないんだ」
「…………あの、黒いヘンな奴らの正体は理解したぞ。まだ信じられないけど……、目の前で見ちまったのには違いないし」
「ふむ」
タクミは眉ひとつ動かさずに黙って聞いている。腕を組んで。
ヒナタは構わずに続ける。
「【ヤツら】、……あれは、楪が唱えた呪文のせいで呼び出された……その……」
「悪霊ですっ!」
「そう、その……悪霊? で、それを……」
「それを追い払い、封印するのが俺らの仕事だ」
タクミの言葉に、ヒナタの声が通常の二倍ほど大きくなる。
「そう! そこ! そこの理解が不能なんだよ! 何なんだよ。え? 突然現れた黒い物体も確かに謎だけど、お前らも十分怪しいからな! 一体、何なんだよ、お前ら。あの黒い物体と仲間なのか!?」
- Re: ノンストップ☆days〜イタズラと悪魔は紙一重〜 ( No.10 )
- 日時: 2013/02/20 22:57
- 名前: 瀬野 こなみ (ID: DHfHPQAg)
目の前で叫ばれ、タクミは一瞬怯んだように目を見開いた。
しかしすぐにいつもの端正な顔つきに直ると、微笑して、
「落ち着け。誰も仲間だとは言っていない。あの黒い塊は悪霊だ。人の悪の所業によって澱んだ場所や、その者の心に巣食うモノ。それを追い払い、回収する義務が俺にはあるんだ」
「…………」
そっか、と言ってヒナタは俯いた。
疑って悪かったな。
ぼそりとそう聞こえた。
「…………なーんて納得するとか思うなよ! お前らのそんなアニメ漫画みたいな話、オレは信じねーからな! 帰るぞ、楪」
そのまま、くるっ と踵を返し、スタスタと公園の門に向かって歩き始める。
「ち、ちょっとヒナタあんた……」
楪が今にも帰宅しそうな勢いのヒナタの服をつかもうと手を伸ばしたその時、
「ふっふっふ。それはできないです、ヒナタ」
ヒナタの行く手を阻むようにしてサンちゃんが仁王立ちで待ち構えていた。
そして何故か不敵な笑みを浮かべている。いや、浮かべるどころか、既に声に出して笑っている。
「オイ小っこいの。そこ、通せよ。な、飴玉やるから」
「小っこいゆーな! ですよ。そしてヒナタ、てめーは帰ることは出来ないのです!」
「なんでだよ!」
「それには理由があるのですー。ふっふっふ」
何なんだよコイツはああああっ、と、怒りに震えているヒナタの目の前で、サンちゃんの目がキラリと光る。
- Re: ノンストップ☆days〜イタズラと悪魔は紙一重〜 ( No.11 )
- 日時: 2013/02/20 22:59
- 名前: 瀬野 こなみ (ID: DHfHPQAg)
「ヒナタとユズリハには、サンちゃん達のお手伝いをしてもらうのですーーっ!」
いえーい!と一人盛り上がっているサンちゃんを横目に、ヒナタは一言。
「うん。じゃ、オレ帰るわ」
「待つですヒナタあーーーっ」
サンちゃんが叫びながら、ヒナタの服をがっちりと掴む。
迷惑そうな顔をしてヒナタが振り向く。
「だから何なんだよ。楪はまだしも、オレは無関係だし。ついでに睡眠時間減っていくし」
「一つ忘れてもらっちゃあ困ることがあるのですよ」
「ハイ、なんでしょう」
「悪霊が出てきちゃったのはどこのどいつのせいですかあ?」
「どこのどいつのせいだ?」
「あなたの『いもーとさん』のせいじゃないですかあーーっ!」
ずばり!
サンちゃんの押しの一手に楪が「はーい、あたしのせいでーす!」と笑顔で両手を上げる。
「だからって楪は楪だ! オレが呼び出したんじゃない」
「あれえー? 一緒に魔法陣描いたの、どこの誰だったっけなああ」
「あれは楪っ、お前が描けって……!」
「はい、ヒナタも共謀した罪で、『いもーとさん』と同罪です。これにてもう言い逃れはできませんよー。ふっふっふ」
ヒナタは頭を抱えて呻くしかなかった。
「とゆーわけですっ。お手伝い、よろしくお願いしますですよ」
「うんっ。よろしくね、サンちゃん」
「おーっ! よろしくです、ユズリハ」
お互い波長があったのか意気投合している女子二人の姿に、ヒナタはため息を付くしかなく、
「……まあ、よろしく頼む」
タクミにそう言われ、力なく微笑むしかなかった。
公園を覆うようにして生えている木々の葉が、月明かりを跳ね返してキラキラと輝いていた。
******
「見た・・・・・・見たぞ」
とある一つの人影が、住宅街の外れにある公園の入り口前で立ち止まっていた。
胸には、デジタルカメラを大切そうに抱えて。ちなみにこのカメラは、四年間お菓子を我慢して貯めたお小遣いで買った、大切な最新モデルである。
「僕はこの目で、しっかと見た!」
ザザ——っと風が吹き荒れ、木々が騒めく。
人影はフフフッと口の端を釣り上げて笑い、液晶画面を人差し指でなぞる。
そして薄い唇を歪めてもう一度大きく息を吸う。
「僕は、見たんだあああああああ!」
深夜の住宅街に響いたその声の主は十分後、住民の通報によって、
「キミ、ちょっとすまないけど、署の方まで来てくれないかな」
「え……ちょ、ちょっとあのお巡りさん、僕はただ……。え、ちょっと……もしもーし!?」
強制撤退させられることとなる。