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28話　葵サイド


これでよかったんだ。


俺は2人の姿を遠くから見てた。
2人がうまく行った後を見送ると屋上に駆け付けた。


「はぁはぁはぁ」


何でこんなに胸が苦しいんだよ。
別にもう終わったことだろ。

リマ、笑ってたな…
俺が今まで見てきた中で最高の笑顔だった。
だけど俺には向けてない。
そのせいか嬉しくなかった。


「ッ————」


今までこんなに思ってきた俺は馬鹿だった。
初めから無理だったんだ。
兄と妹の恋なんて…
ましてや結婚して子供を産めるわけでもない。


———カタッ


その音に気付き後ろを振り返ってみるとそこには春美がいた。


「あっ…」


春美は「ばれた…！」という顔をして俺を見ていた。


お前は何でこんな俺の事が好きなんだ？
どうせ———


「あのっ、葵君…」


「何…」


「私遠くから見ていてもいいかな…？」


「何で……」


「えっ…？」


「何で俺のこと好きなの？」


思わず口から出た。
慰めの言葉なんかいらない。
ただ本心が聞きたかった。


「優しいとこ。」


「………」


女はいつもこうだ。
優しいとこ、面白いとこ————
そんなことしか言わない。


「だけど不器用な所。本当は伝えたいのに馬鹿なほど人思いで自分が損してるところ。」


ッ—————！


コイツ…
俺の事ちゃんと見てくれて———


「はる———「馬鹿ーーーーー！！」


急に春美が叫んだ。


「本当に馬鹿なんだから。でも好きなのよ。」


「………」


なぜか春美の目をそらせなかった。


———ガチャ


その時屋上のドアが開いた。


そこにはリマと利樹が手をつないでいた。


28話　完