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29話　葵サイド


何でここにリマがいるんだろう？
俺はよく分からなかった。


「お兄ちゃん。」


リマは利樹の手を握ったまま声に出した。


「よかったな。」


ただ一言そういった。
なのになんで俺は———


「おいお前まだ蹴りつけてないだろ？」


利樹が俺に向かってそういった。
蹴り？
何の蹴りだ？
もう決まってるじゃないか。
リマは利樹を選んだ。
そうだろ。


「ちゃんと言えよ！好きって。」


利樹の言っている言葉が理解できなかった。


「利樹な————「男らしく伝えたらいいだろ！」


ッ————！


その瞬間背中に電気が走ったみたいにビビッときた。

そっか…俺はまだリマにこの気持ちをきちんと正面に向かって伝えたことがなかった。


「リマ。」

「え……」


「俺リマが好きだ。」

「………」


リマは俺がこんなことを言っているのに目をそらさないで聞いてくれていた。
だから俺も伝えたい。


「小さいころからずっとリマを女として見てきた。誰よりも好きだった。こんな冷めた俺を昔から好きと言ってくれるお前が好きだ。」


答えは決まっている。
だけど必死に伝えた。
言葉にうまくできなかったと思う。
だけど———


「ありがとう。」


ッ—————？


「私もお兄ちゃんが好きだよ。だけどね今は利樹さんが好きなの。ごめんなさい。」

「………」


「でもこれからもお兄ちゃんが好きなのはずっと変わらないっ！ずっと、ずーーーっと！！」


「フッ」


思わず笑ってしまった。
お前は優しいな。
手で大きく表現して伝えようとしてくれているんだな。


「お兄ちゃん…」


「よしっ、これで終わり！俺はちゃんと振られたし———「お兄ちゃん、だけどね私は…」


「これからもずっと、ずーーーっと好きなんだろ。」


「もう///意地悪だなぁ。フフッ」


こうして俺の恋は終わった。


「後、利樹ありがと。」


「えっ…おう！」


俺達はこれからも続いていく。


29話　完