コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ダブルデート4 ( No.112 )
- 日時: 2013/04/05 00:10
- 名前: ゴマ猫 (ID: tHinR.B0)
「それって……どういう意味?」
何となくだが、自分の考えてる事と違うんじゃないか?
そう思い、その真意を知りたくて三波に問いかける。
「水島さんと一緒に居ると安心出来るんです……私、水島さんの事が……」
三波がそこまで言いかけたところで、後ろから大きな声がかかった。
「おーいっ!!水島ー!!」
息をきらせて走ってきた声の主は赤坂だった。
「赤坂?」
「水島、進藤さん見てないか?」
「はっ?赤坂と一緒に行動してたんだろ?」
「それが、俺がちょっと目を離してたら、急に居なくなっちまったんだよ」
「携帯は?」
「電源が入ってないらしくて、つながらないんだよ」
やれやれ。
何やってんだアイツ。
まぁ、かおりの事だろうから理由があるんだろうけど。
「俺、ちょっと探してくるわ」
「あの、水島さん!!」
走り出そうとした瞬間に三波の声がかかる。
「ごめん、三波。また戻ってきたら続き聞くから」
そう言って俺は駆け出した。
しかしアテもなく、この広い園内から、かおり捜すなんて難儀だな。
迷子のお呼びだしでもしてもらうか?
さすがに高校生にもなるんだし、危険な事はないだろうけど。
でも、もし変な奴らに絡まれて危ない目にあってたらどうしよう?
そんな不安感が俺の足を急がせた。
その後、1時間くらい園内を走りまわっただろうか?
全身から汗が噴き出し、呼吸が乱れて動くのがキツくなった俺は近くのベンチに座り込む。
「……ったく、どこ行ったんだアイツ」
さすがにもう赤坂達の所に戻ってるかもしれない。
そう思い携帯で連絡を取ろうっと思ったのだが。
「……そうだった。俺、携帯持ってないんだ」
あの乱闘事件以来、携帯が壊れて使えなくなっていたのだが、不便でもなかったので買い直してなかったのだ。
はぁ、こんな時に携帯があれば一発なのによ……。
その時、ふと聞き慣れた声が聞こえた。
「あれ?真一そんな所で何やってんの?」
顔を上げると、まさに俺が捜していた人物、かおりが居た。
「お、お前……人がどれだけ心配したと!!」
「あぁ〜、ごめんごめん。途中で迷子になってる子見つけちゃってさ、一緒にお母さん捜してたら遅くなっちゃって」
「にしたって、連絡くらいくれたら良かったのによ」
「あはは……途中で充電なくなっちゃって」
かおりは申し訳なさそうにそう言った。
「はぁ、でもかおりが無事なら良かったよ」
胸のつかえが取れたかのように、安堵感が広がる。
「ねぇ?心配……してくれたんだ?」
声のトーンが落ちて、真剣な表情でそう聞くかおり。
「当たり前だろ?」
俺がそう答えると、かおりは恥ずかしそうに笑った。
「そっか、そっか〜。まったくしょうがないなぁ〜真一は」
色々とツッコミをしたかったが、何だか無粋な気がしてやめておいた。
「ねぇ真一?今からさ、2人で観覧車乗らない?」
「ん?赤坂達も心配してるんだから、先に合流した方が良いんじゃないか?」
「観覧車乗ったら、合流する」
「けどよ……」
そう言葉を続けようとしたら、かおりにジト目で睨まれてしまった。
「……分かったよ」
夕暮れから夜に変わる。
そんな曖昧な時間の中、俺達は観覧車に乗っていた。
「わぁ〜、見なよ真一!!高いよ〜」
「見てるよ。ってか観覧車なんだから高くて当たり前だろ」
俺がそう言うと、かおりは頬を膨らませる。
「夢がないな〜真一は。もっとこう、ロマンチックな事言えないかな」
「俺がそんな気のきいたセリフ言える訳ないだろ」
実際どれくらいの高さなんだろうか?
人は豆粒みたいに、建物はミニチュアハウスのように小さく見える。
そんな事を考えてると、上空の風の影響のせいか、ゴンドラが揺れる。
「きゃあっ」
立って景色を見ていた、かおりがバランスを崩す。
俺は慌てて、かおりを抱き留めた。
「……おっと」
「あ、ありがと」
顔が近い。
2人の間に沈黙が流れる。
「………」
「………」
かおりの髪の甘い香りが、鼻をくすぐる。
いつも身近に居て、あまり気にした事なかったけど、かおりは美人だ。
クラスの中でも、男女問わず人気があるらしい。
明るい性格も人気の要因なのだろう。
今日はやけに変な気持ちが渦巻く。
赤坂と一緒に居る、かおりを想像して嫉妬したり。
ん……?嫉妬?
俺、嫉妬してたのか……?
「真……一」
「えっ?」
「……苦しいよ……」
「あ、悪い……!!」
俺は慌てて、抱いていた身体を離そうとすると。
かおりが今度は自分から俺を抱きしめてきた。
「もうちょっとだけ……このままじゃダメかな?」
「……いいけど」
ゆっくりと動く観覧車の中で、自分の心臓の鼓動が凄い勢いで脈打つのを感じていた。