コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

日常と変わりゆく日常 ( No.116 )
日時: 2013/04/11 12:37
名前: ゴマ猫 (ID: diC/OxdM)

翌日、登校しようと玄関を開けて外を出ると、そこには見知った顔が立っていた。

「……おはよっ、真一」

幼なじみのかおりが、家の玄関前に居た。

「かおり?何で家の玄関の前に居るの?」

昨日の今日だからか、かおりの顔を見るだけでドキドキしてしまう。

「いやぁ〜、せっかく家も近いんだし、たまには一緒に登校しようかな〜……なんて」

その言葉を聞いて、また少しドキドキしてしまう。
昨日からヤバいな俺。
少しの間何も言えずにいると、かおりは不安そうな顔で訊ねてくる。

「……もしかして、嫌だった?」

「いや、全然嫌じゃない。むしろその……」

そう言いかけたところで、俺の後ろから冷ややかな声がかかった。

「……お兄ちゃん、朝から玄関先でイチャイチャしないでよ」

ちょうど優子と一緒に出ようとしていたのを忘れていた。
後ろで一部始終聞いていたのか、不機嫌な優子に冷たい目で睨まれてしまった……。

「優子ちゃん、おはよー」

「おはようございます。かおりさん」

かおりに挨拶する優子。
丁寧なんだが、なんだかトゲがあるような気がするな。

「おい、優子何で怒ってるんだよ?」

そう訊ねると、優子は深い溜め息をつく。

「ふぅ、別に怒ってないよ。お兄ちゃんがデレデレしてるのが何か嫌だっただけ」

えっ?
俺デレデレなんてしてなかったと思うんだけど。

「私、先に行くから。お兄ちゃんはかおりさんとごゆっくり」

そう言って、優子は足早に1人で行ってしまった。

「……何か悪いな。いつもはあんな感じじゃないんだけどな」

俺がそう言うと、かおりは小さく笑う。

「仕方ないと思うな〜。優子ちゃん、真一の事好きだもんね。だから他の女の人と真一が一緒に居ると、取られちゃうみたいで嫌なんじゃないかな?」

「そんな事ないだろ?優子がたんに機嫌が悪かっただけだよ」

「はてさて……どうなんだろうね〜」

そう言ってかおりは悪戯っぽく笑った。

最初は変な緊張をしていたが、優子のおかげ?か緊張がほぐれて普段通りに他愛のない会話ができた。

こうして俺達は2人で登校するのだった。


教室に着くと、赤坂が笑顔で待っていた。

「よっ、水島」

「あぁ、赤坂おはよー」

「で……どうなんだ?」

顔近付けて、そんな事を聞いてくる赤坂。

「何が?」

「何がじゃねぇよ。あの後、進藤さんとは進展したのか?」

「進展って……別に何も」

実は家に帰ってからも、かおりの事を考えてドキドキしてたのは秘密だ。
そんな事言ったら茶化される。

「な〜んだ、何もなかったのか。あんなに良い雰囲気だったのにな」

赤坂はがっかりしたように肩をおとし、大げさなリアクションをする。

「別にいいだろ?赤坂こそ、三波とどうだったんだよ?」

「どうも何も……まぁ、三波さんと俺は何もないよ」

赤坂は苦笑いしながら、肩をすくめる。
どういう事だ?

「とにかく、水島は進藤さんの事だけ考えてやれよ」

赤坂は急に真面目な顔をして、そんな事を言う。

「あ、あぁ」

少々赤坂の迫力に押されながらも、俺は頷いた。
少なくとも昨日から、かおりの事は頭から離れないしな。



今日も1日が終わり、夕焼けに染まる街並みを見ながら家路に向かっていた。
そこで見知った人物を見つける。

「よっ!!かおり!!」

背中をバンと叩く。

「わわっ!?」

相当驚いたのか、ペタっと地面に尻餅をついてしまうかおり。

「驚いたか?」

「あ……うん、ちょっとビックリ」

何故だかいつもより元気がない声のトーンで、小さく笑うかおり。

「どうした?何か元気ないな」

「そうかな?別に普通だよ」

「また具合でも悪いのか?」

「それは大丈夫。真一だってまた風邪引いたら、大変なんだから無理しちゃダメだよ〜」

一瞬だけ垣間見た、寂しそうな表情はなくなり、いつものかおりに戻っていた。