コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 日常と変わりゆく日常2 ( No.119 )
- 日時: 2013/04/07 18:30
- 名前: ゴマ猫 (ID: S9l7KOjJ)
春が終わって、夏の気配が近付いてきていた。
その前に鬱陶しい梅雨があるのだが、雨は雨で好きだったりもする。
あれから、かおりとはこれといった進展もなく、普段通りに過ごしていた。
もちろん、赤坂や三波とも普段通りで、時間があったら屋上に行き、4人で昼食をしたりするようになっていた。
そんなある日の休日。
日曜日、特にやる事もなかった俺は部屋でゴロゴロしていた。
「うーん、たまにこう、インドアなのも良いよな」
そんな事を呟きながら、ある事を思い出す。
「そういや、携帯壊れたまんまだったよな……」
やる事もないし、優子や赤坂にも買い直せって言われたし、トラブルあった時結構困ったしな。
ちょっとケータイショップでも行ってみるか。
そう思い、俺は着替えて近所のケータイショップに行く事にした。
ショップに着き、新しい携帯を見てみる。
「ふーん、今はスマホが主流なのか」
タッチ操作ってのが何か好きになれなくて、携帯いわゆるガラケーってやつを好んで選んでいた俺。
でも最近は数が少なくなってるみたいだ。
あのタッチ操作って、人の静電気を利用して動かしてるとか聞いた事あるな。
科学は日々進歩してるんだな。
そんな事を考えていると、ショップのショーウィンドウ越しに、かおりの姿を見つけた。
俺は店を出て、かおりに声をかける。
「おーい、かおり」
「あれ?真一、こんな所で何やってるの?」
「この間壊れた携帯を、買い直そうと思ってな」
「あぁ〜、やっと買い直すんだ。携帯ないと大事な用があった時とか困るんだから」
うーん、まぁそうなんだよな。
分かっていても、中々動けなかった俺。
「悪い悪い。ところで、かおりは何してたんだ?」
俺がそう訊ねると、かおりは一瞬考えこむようにしてから答える。
「ん〜、色々かな?ねぇ、それよりお昼食べた?もしまだなら一緒にどうかな?」
自分の腕時計に目をやると、時間は正午を示していた。
「あぁ、俺も昼飯まだだから良いぞ」
今日優子は、友達と予定があるとか言って朝から出掛けてしまったし、昼飯は何か適当に食おうと思ってたしな。
俺達は近場のファミレスに行き、昼食を食べる事にした。
ファミレスに着くと、俺達は店員さんに案内されて、窓際の席に座った。
「えへへ、なんだか真一と休日に一緒って久しぶりだね」
テーブルに頬杖をつき、嬉しそうにするかおり。
そんな嬉しそうにされると、こっちも嬉しくなってきてしまう。
「そうだな〜。昔はほぼ毎日のように一緒だったけどな」
本当に、昔は飽きるくらい一緒に居た気がするよな〜。
高校生になっても、仲が良いってのは意外と珍しいケースなのかもしれない。
「本当だね〜。あっ、注文決まった?」
「あぁ、決まったぞ」
俺はベルを押し、店員さんに注文を頼んだ。
俺はハンバーグランチ、かおりは日替わりランチにした。
「あのさ真一、もし……もしだよ?私が居なくなったらどう思う?」
「どうって……何だ突然?」
急に真剣な顔をして、そんな事を言うかおり。
急に何を言い出すんだと、不思議に思っていると。
「だからもし、私が居なくなったらどう思う?たとえば、寂しいとか、悲しいとかさ」
「そりゃ、居なくなったら寂しいよ。今までずっと一緒に居たんだし……でも何でそんな事、聞くんだ?」
かおりは少し顔をふせて、ゆっくりと話しだす。
「実はね……お父さんの転勤が決まって、私引っ越す事になったの」
引っ越し?
その言葉に言い表せない不安を感じ、俺はすぐさまかおりに問いかける。
「場所は……場所は遠いのか?」
「……ちょっと遠いんだ。だから転校もしなきゃいけないんだ」
その言葉を聞いた途端、俺の心がざわめき、不安が支配する。
「それっていつだ?今すぐって訳じゃないんだろ?」
時間があれば、何とかなる訳じゃない。
引っ越しという事実は変わらない。
分かってはいるが、時間が欲しかった。
それほど俺の頭はパニックになっていた。
この時、俺は初めて気付いたのかもしれない……いつも一緒だけど、いつまでも一緒な訳ではないのだと。
「……来月には。だからこうして毎日会う事はできなくなっちゃうね……」
寂しさと悲しさが混じった目をしながら、かおりは呟くように言う。
俺はその後の言葉が出てこなかった。
その後、運ばれてきた料理の味は、よく分からなかった。