コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

日常と変わりゆく日常4 ( No.123 )
日時: 2013/04/09 22:03
名前: ゴマ猫 (ID: RohPBV9Z)

翌日の放課後、俺は1人で屋上に来ていた。
かおりとは今日も話していない。
ついこの間まで普通に話して、笑っていたはずなのに、今は何だか微妙な距離感があるような気がした。

俺がいつも通りに明るく話しかければいいのだろうけど、それができない。
まるで自分の心が2つあるみたいだ。

「あぁーっ!!どうしたいんだ俺!!」

誰も居ない放課後の屋上で叫ぶ。
その時、急に視界が真っ暗になった。

「だーれだ?」

少々ヒンヤリとした手の感覚が目元を覆う。
ってか、今時こんな事する奴って誰だよ?

「誰だ?まったく分からん」

「もう少し考えて下さい。クイズになりません」

声の主は、少し拗ねるようにそう言った。

この声って……。
透き通った水のような声。
それに、この丁寧な喋り方。

「三波だろ?」

「あぁ、分かってしまいましたか?」

三波は俺の目元から手を離し、俺の正面に来た。

「分かるよ。声に特徴があるからな」

寝る時に、三波の声を聞いてたら熟睡できそうなくらい癒やしボイスだ。

「そうなんですか?自分では分からないものですね」

三波は少し首を傾げて、そんな事を言った。
こういう仕草、1つ1つが可愛いと思う。
人気No.1ってのも納得ってとこか。

「それで、何か俺に用だったの?」

「いえ、水島さんが何か難しい顔をされてたので、気になって声をかけたんです」

俺そんな難しい顔してたのか。

「ってか、何で屋上に?」

「偶然、屋上に行く水島さんを見かけて」

なるほど。
わざわざ心配してくれたのか……優しいな。

「水島さん。何か悩みでもあるんですか?」

「いや、まぁ……ちょっとな」

さっき叫んでたのを、聞かれてたかと思うと、急に恥ずかしくなってきてしまった。

「もし良かったら、これから家に来ませんか?」

「えっ?……三波の家?」

急な提案に少々驚いてしまう俺。

「えぇ、水島さんさえ良ければですけど」

そういえば、三波の家庭環境とかって謎なんだよな。
イメージだと、すげーデカい家とかに住んでそうだけど。
もしかしたら、意外に普通な家庭だったりして……。

「あの、水島さん?」

「お、おう」

どうも三波と話してると、思考の世界に入ってしまう。
三波の声がそうさせるんだろうか?
イカン、イカン。

「どうしますか?」

「ん〜……そうだな。三波の家にも興味あるし、少しだけお邪魔しようかな」

1人で悶々と悩んでより、少しは気分転換になるかもしれない……って言っても、かおりの引っ越しが取り止めになる事はないんだけど。



こうして三波の家に行く事になった。
三波の家は学校から、徒歩10分と意外に近くだったのだが……。

「えーっと……三波さん?これは何かの間違いですか?」

「え?何がですか?」

眼前に広がる光景は、普通の一軒家が軽く10軒は建つだろう広さだった。
白を基調とした洋風な外観と、一面に芝生が敷きつめられた広い庭が特徴的だ。
マ、マジでお嬢様じゃん。

「いや、三波ってお嬢様だったんだな」

「そんな事ありませんよ」

いや、そんな事あるでしょ。
こんな家、見た事ないよ俺。

「それより、水島さん門の前に立ってないで、中に入って下さい」

「あぁ、悪い悪い」

三波に促され、門をくぐって家の中に入った。
家の中も、さぞかし西洋的なのかと思ったが、意外に中は一般的な内装だった。

「お帰りなさいませ。お嬢様」

中へ入ると、白髪で初老の男が出迎えてくれた。
こ、これが噂に聞く執事っというやつだろうか?

「ただいま。時田さん」

「おや?そちらの方は?」

初老の男は、俺の事を珍しい物でも見るかのように目を向けてきた。

「私の友人です」

「ど、どうも。水島です」

かなりテンパって、ぶっきらぼうな挨拶になってしまった。
初老の男は、合点がいったかのように手を叩く。

「あぁ〜、あなた様のお話しは、よくお嬢様から伺っております」

「へっ?よく?」

ポカンとした顔になってしまう。
そんなに噂されてんのか俺。

「と、時田さん!!」

その途端、三波が真っ赤な顔で慌てる。

「失礼しました。ささっ、どうぞこちらへ」

案内されたのは、だだっ広いリビングルーム。
人が居ないせいか、どこか寂しさを感じる。

「何か……落ち着かないな」

こんな広い家に慣れてないからか、ソワソワしてしまう。

「そうですか?ん〜、じゃあ私の部屋に行きましょう」

「へっ?」

そう言って、三波は俺の手を掴むと、2階の三波の部屋に連れていかれた。
部屋の中は、青と白で統一されていた。
女の子!!って部屋じゃないけど、清楚で少し落ち着いた雰囲気があり、三波のイメージに合っていた。

「さっ、水島さん座って下さい」

「座れと言われても、どこに座れば?」

かおり以外の、女の子の部屋に入った事がないので妙に緊張してしまう。

「じゃあ、ここに座って下さい」

そう言うと、三波が自分の座っているベッドの横をポンポンと叩く。

「えっ、そこ?」

何だか、緊張が一気に加速したのだった。