コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 遭遇 ( No.33 )
- 日時: 2013/04/29 17:08
- 名前: ゴマ猫 (ID: Mx34GQYU)
ベンチに座り、可愛い水色の包みを広げる三波。
四角い小さめな、バスケットから色とりどりの、野菜を挟んだサンドイッチが出てきた。
「色々あるんですよ〜。玉子に、ハムに、チーズに、ツナ。水島さんどれが好きですか?」
何ですか、このシチュエーションは?
一緒に昼飯なんて、こんな幸せあって良いのか?
これドッキリじゃないよね?夢オチとかも嫌だよ俺。
「じゃあハムで」
「はいどうぞ」
早速一口食べてみる。
これは美味い!!
オーソドックスな組み合わせだけど、シンプルで美味い。
何かパンも普通のと違うような気がするけど、胚芽パンってやつだっけ? 栄養が豊富だって聞いた事あるよな。
そういや、人が初めて焼いたパンって、たき火して燃え尽きた灰の中にパンを入れて灰をかぶせて焼いてたらしいな。
……まぁこのサンドイッチとは、全然関係ない話しだな。
サンドイッチ伯爵の話しの方が合ってたよな。
などと自己ツッコミをする。
「美味いな。このサンドイッチ」
「お口に合ったみたいで嬉しいです。水島さんの好みが分からなかったんで、色々作ってきちゃいました♪」
今なら分かるぜ田中君……確かに可愛いよ。
はにかむ笑顔もどこか上品だけど話しやすくて、人気がNo.1ってのも頷けるな。
「ところで三波、どうして弁当なんて作ってきてくれたんだ?」
「昨日のお礼ですよ。昨日はろくにお礼も出来ず、水島さん帰ってしまいましたから」
うーんちょっと色々な期待をしてしまってたんだが、そんなあっさり言われるとへこむな。
「別にそんな気を使わなくて良かったのに」
「昨日も言いましたけど、本当に助かりましたら……水島さんは命の恩人ですよ」
言い過ぎだ。
そこまで賛美されると恥ずかしい。
ふと、ある事を思い出す。しまった……昼休みにかおりの所行こうって思ってたのに、舞い上がって忘れてた。
「三波悪いんだけどさ、これから俺ちょっと用事があって……」
そう言いかけたところで、屋上入り口の扉が開く。
扉を開けた人物は、俺が今まさに会いに行こうとしていた、かおりだった。
「……えっとお邪魔しちゃったかな?」
申し訳なさそうに言うかおり。
「そんな事ない。今かおりの所へ行こうと思っててさ」
別に悪い事をした訳ではない。
しかし心のどこかで後ろめたい気持ちが渦巻いていた。
「そっか。教室行ったらここだって聞いたからさ」
気まずい。
そんな中、三波が口を開いた。
「あの……つかぬ事を伺いますが、お2人はどのような関係なんでしょうか?」
「へっ?真一と私の関係?」
目を丸くして驚くかおり。
「はい。とても仲が良いように見えたので、もしかして付き合ってるのかと……」
「付き合ってる?……その私と真一は幼なじみで、腐れ縁って言うか、何というか……」
何故か、急にしどろもどろになるかおり。
「そうなんですか」
「三波さんこそ、真一と屋上でお弁当なんて、どうして?」
「水島さんは、私の命の恩人なんです。昨日はお礼も出来なかったので、今日はお礼にお弁当でもと」
「命の恩人?」
状況が分からない、かおりに俺は簡潔に昨日あった事を伝える。
「そっか、真一が助けた相手って三波さんだったんだ」
納得がいったように、頷くかおり。
「良かったら、進藤さんも一緒にどうですか?」
ん? 2人って面識あるのか? 三波はまぁ有名人らしいから分かるけど、かおりの名前知ってるなんて。
「私はいいよ。クラスにお弁当あるし、戻るね」
何だか、いつものかおりらしくなかった。
いつもなら『良いの〜?!』とか言って絶対断らないのに。
その日のかおりは様子が少し変だった。