コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

幼なじみ ( No.40 )
日時: 2013/04/29 17:22
名前: ゴマ猫 (ID: Mx34GQYU)

翌日の昼休み、俺は再び屋上に呼び出されていた。

「どうしたんだ?こんな所に呼び出して」

「うん。今日さ、私お弁当作ってきたんだ〜」

かおりは緑の包みを俺の目の前に出す。
どうしたんだ? 普段料理なんてしないし、出来ないのに。

「あのさ、どうしたの?」

「ん?何が?」

「かおり料理出来ないじゃん。しかも、いきなり弁当って……」

「出来ないんじゃなくて、やらないだけなの!!」

かおりは焦りながら言う。
こいつは、料理はする物じゃなくて食べる物だよ〜ってずっと言ってたしなぁ。
何がどうなってんだ?

「とにかく、文句は食べてから言ってよね」

いや、文句は一言も言ってないぞ。

「分かったよ。じゃあ、ありがたく……」

フタを開けると、真っ黒だった。
まるで、世界が闇につつまれたかのように、全ての色彩を取り除いたかのように、弁当の中身は漆黒の色だった。

「……今日は良い天気だよな〜。少しランニングでもしてくるかぁ〜」

速やかに退散しようとしたが、かおりの手が俺の首根っこを掴む。

「はい、真一の好きな肉団子だよ。あ〜ん」

真っ黒いカタマリを、箸でつかみ口元に持ってくる。

「それは、肉団子じゃなくて炭団子だっ!!」

マジで、致死量だろ!! それは!!

「じゃあ、ご飯から食べる?はいどーぞ」

真っ黒なご飯を、口元に持ってくる。

「……かおり1つ、聞きたいことがあるんだが」

「ん?何?」

「他のおかずが真っ黒なのは百歩譲って、良いとしよう……だが何故ご飯が真っ黒なんだ?!ご飯は白だろ!!」

「あぁ、それはねご飯をタップリソースで炒めたんだよ。白いご飯じゃつまらないでしょ?」

かおり……ご飯に面白味はいらないんだよ。
せめて茶色ぐらいで止めてほしかった。

「待て、ちなみに味見はしたんだろうな?」

「ううん、味見なんてしてないよ。」

あっけらかんした表情で言うかおり。
味見は料理の基本じゃないのか?
ってか仮にも女子が、漆黒の弁当持って来るってどうなのよ?

「なるほど……俺が実験台って訳か」

「さっきから文句ばっかり。良いから一口食べてよ」

頬を膨らませて、不満な顔するかおり。

「この暗黒物質を、俺に食えと言うのか?」

正直腹を壊しそうで、勘弁なのだが……。

「……くせに」

聞き取れないくらいの小さな声で呟くかおり。

「何だって?」

「三波さんのお弁当は、あんなに嬉しそうに食べてたくせにっ!!」

目に涙を溜めて叫ぶかおり。
こんなかおりは見た事がなかった。

「私ね……すっごく心配したんだよ?……真一が怪我したって聞いて、でも真一は、三波さんと楽しそうに話してた」

「だからそれは……」

「分かってるよ!!自分がおかしい事、言ってるのも分かってる。でも私にも自分の気持ちが分からないんだよっ!!」

そう言ってかおりは走り去る。
俺はしばらく呆然と立ち尽くしていた。