コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

相談 ( No.42 )
日時: 2013/04/29 18:02
名前: ゴマ猫 (ID: Mx34GQYU)

翌日、かおりは学校に来なかった。
あの時何故、かおりは泣いていたんだろう?
考えても、考えても答えは出ない。
その日の授業は、頭に入らなかった。


「よう水島。今日はずっと暗い顔してっけど、どうした?」

放課後になると、赤坂が話しかけてきた。

「あぁ、ちょっと色々な」

「お前、最近そればっかりだな」

苦笑いしながら、肩をすくめる赤坂。
こういう時は、誰かに相談した方が良いかもな。

「なぁ赤坂、ちょっと相談ってか、聞きたい事があるんだが」

「おう何だ?」

「例えばなんだが、昔から仲の良い幼なじみが居たとする。んで最近仲良くなった女の子と、昼を一緒に食べてる所を見られて、翌日その子が弁当を作ってきてくれたんだが、もう見た目からヤバイので、そのまま素直に感想を言ったら泣かれてしまった……どう思う?」


「まるで、お前と進藤さんの関係だな」

「だから、例えばだって言ってるだろ!?」

ぐっ変な所はこいつ鋭いんだよな。
でもちょっと話しが、具体的過ぎたからな。

「ちなみに、弁当は食べたのか?」

「いや、食う前に立ち去られた」

そう俺が言うと考え込む赤坂。
もうほぼ、俺の事だって分かるなこれ。

「ふーむ。弁当の見てくれはどうあれ、ちゃんと食べるのが礼儀じゃないか?それにせっかく作ってくれたのに文句を言うのもな……」

そうか……いくら闇弁当とは言え、かおりなりに一生懸命作った物だ。
一口も食べずに、文句言ってたらショックだよな。

「まぁ、原因はそれだけじゃないと思うがな」

「他にも原因があるのか?!」

「多分な。だけどそれはお前自身が考えなくちゃいけないんじゃないか?」

何だ赤坂の奴、心あたりがあるなら教えてくれたって良いと思うんだが。

「……分かったよ。考えてみる」

「それと、これは男の俺から見た意見だから、女の子の意見を仲良い女子に聞いてみたらどうだ?」

はい?仲良い女子なんてそんな居ねぇよ。
当事者のかおりや、三波には聞けないし……ん? 1人居た。



俺は図書室に来ていた。

「あら?珍しいわね。最近は全然顔見せなかったのに」

木原日向。
俺の1つ後輩で、人見知りで、本好き少女。とある事がきっかけで話すようになったのだ。

「なぁ木原、お前に相談したい事があるんだが」

「無理ね。私は今忙しくてそんな暇が無いのよ」

わずか1秒の返し。
もう少し考えてからでも良いだろ!!

「いや、お願いしますよ木原さんこの通り」

手を合わせて頼み込む。

「ふん……忙しいと言ったでしょう?」

冷たくあしらってくる木原。
しかし、ここで引き下がる訳にはいかない。

「日向!!俺は君じゃなきゃダメなんだ!!頼む俺にチャンスを与えてくれ!!」

結構周りに、聞こえるような声で言ってみる。

「な、何気持ち悪い事言ってるの!?図書室で誤解を招く言い方はやめてちょうだい」

顔を、真っ赤にして慌てる木原。
その間に周囲の目線が、つき刺さってくる。

「……はぁ、分かったわよ。じゃあ早く言いなさいな」

諦めたような口調で、ため息まじりにそう言う木原。

俺はなるべく、自分の事だという事をふせて話しをした。

目を瞑り、話しを聞き終えた木原は、目をゆっくりと開けて一言。

「クズね。その男は」

バッサリ、一刀両断、切り捨て御免!!

「えぇっ!!」

「だってそうでしょう?大体、そんな分かりやすい事に気付かないなんて、脳みそ腐ってるんじゃないかしら?」

「そ、そこまで言わなくても良いんじゃないかな?」

ちょっと俺の心が、ハートブレイクですよ木原さん……。

「あら?だって、それは他の人の話しなのでしょう?何故あなたがかばうの?」

うっすらと笑みを浮かべる木原。
こいつ分かってて、ワザとやってるよな。

「木原、アドバイス的な言葉が欲しいんだが」

「そうね……死ねば良いと思うわ」

ひどっ!! ねぇ俺何したの?!
そんなに重罪なの?!

「……木原、俺が悪かったよ。その話し俺の事なんだ。だから死ぬ以外のアドバイスを頼む」

素直に本当の事を、打ち明けてお願いをする。

「最初からそう言えば良いのに、下手に隠すからいじめたくなるのよ」

ぐっ!!こいつドSなのか?

「今みたいに、素直に自分の気持ちを思ってるまま伝えて、謝れば良いんじゃないかしら?人間エスパーではないのだから、思ってる事は、言葉に出さないと伝わらないわ。伝わらないから、伝えたいと思うのでしょう」

何か、言葉に重みがある気がするな。

俺は、かおりが身近な存在過ぎてよく考えてなかったのかもしれない。

この位なら、言って大丈夫だろうって心のどこかであぐらをかいていた。

だからあいつを、傷付けたんじゃないだろうか?
だとしたら、木原が言うとおり俺って最低だな。

「ありがとう。木原よく分かったよ」

「あっ……ちょっと」

帰ろうとした俺の背中に、木原の声がかかる。

「うん?」

「その……たまには図書室来なさいよね。話し相手が居なくて暇なんだから……」

さっき、忙しいって言ってなかったか?
それに図書室は、話す場所じゃないんだが(今思いっきり話してたけどね)でも、木原なりに気を遣ってくれてるのかもな。

「おう。また来るよ」

そう言って俺は、図書室を後にした。