コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

とある日の妹との休日旅行【番外編】 ( No.47 )
日時: 2013/04/29 17:39
名前: ゴマ猫 (ID: Mx34GQYU)

ある日の休日、俺は妹の優子と温泉旅行に来ていた。

「ん〜、さすが自然がいっぱいある所の、空気はうまいなぁ」

「そうだね〜。何だか別世界に来たみたいだね」

俺達は秘境と言われて山奥にある、温泉が有名な旅館にきていた。
何故こんな所に2人で来ているかと言うと、話は数日前にさかのぼる。


ある日の放課後、俺と優子は久しぶりに2人で商店街に来ていた。

「え〜と、特売のお肉は買ったし……ねぇお兄ちゃん。たい焼き食べていかない?」

ふと、そんな事を言う優子。
最近一部で人気の、ラッキーフィッシュと言うたい焼き屋が、妹のお気に入りなのだ。

「あぁ、あの変な店で買うのか」

味は美味いが、店の外観はハッキリ言って魚屋にしか見えない所だ。

「変なお店じゃないよ〜。それに、タイゾー君可愛いでしょ?」

タイゾー君と言うのは、店のマスコットキャラなのだが、正直気持ち悪いキャラだ。
ゆるカワではなく、キモカワ……いや、キモキャラだ。

「お前のセンスは、よく分らんな〜」

そう言うと優子は、プクっと頬をふくらませる。

「女子の間じゃ今流行ってるんだから〜。お兄ちゃんがセンスないだけだよ」

なるほど。
アレが受けるとは、世の中何が流行るか分らんな。

「まぁいいや。じゃあさっさと行こうぜ」

これ以上反論すると長くなりそうなので、良いところで切り上げる。

店に着くと、相変わらず何屋なんだか分からない店構えと、優子いわく可愛いキャラ、タイゾー君がお出迎えする。

「何食べるんだ?」

う〜ん、と口元に手をあてて悩む優子。

「じゃあ、このきなこもちクリームたい焼きにしよっかな」

うむ、無難なとこだな。
じゃあ俺は少しチャレンジしてみるかな。

「俺はこの、くさやドリアンたい焼きにしよう」

「えっ!?お兄ちゃん本気で言ってるの?」

物凄い怪訝な顔をする優子。

「あぁ、本気だ。見ろ完食者0人ってなってるぞ。食べきったら名前が載るかもしれないぞ」

まぁ0人って書くなら、売るなよって気はするが。
俺は2人分の注文をする。

「あいよ!!お待ち!!あんちゃん、それ完食したら賞品やるぞ」

ラッキーフィッシュの店主がそんな事を口にする。
つまり、絶対食べられないという自信があるのだ。
何故作った?
辺りに立ち込める異臭……これ食えるのか?
しかも、くさやを贅沢に丸ごとすり潰して、生地に練り込んでます。
なんてメニューに説明文が書いてある。
もはや、嫌がらせ以外の何ものでもないだろう。
んで、中身はドリアンか……。

「うっ……お兄ちゃん、あんま近寄らないで」

鼻を押さえ、涙目で距離を取る優子。

「お前な、露骨に避けるなよ」

そりゃ頼んだ俺が悪いけど、ちょっと傷付くぞ。

「だって、臭いんだもん」

「分かったよ。早く食べればいいんだろ」

「あっ、ここで食べていこうよ。それだと、食べながら歩くのはちょっときついよね……」

確かに……この臭いを振りまきながら歩くのはきついな。
仕方なく、というか近隣の皆さんのためにもこの場所で食べ始める。
恐る恐るかぶりつく。

「……美味い」

何と味は美味い!! ただ臭いがひどい。
臭いを例えるなら……いや、やめておこう。

「えっ!!ウソ?!」

驚く優子。
俺は、くさやドリアンたい焼きを優子の口元に持っていく。

「食ってみるか?」

「うっ……私は自分のあるし、お兄ちゃん食べて!!」

涙目になりながら、首を横に振る優子。
鼻を止めればいけると思うんだがな〜。
俺はどうにかこうにか、食べきる事が出来たのだった。

「おぉ〜!!あんちゃんやるな!!初めてだぜ。俺の味を分かってくれたやつは」

まぁ、この臭いは何とかした方が良いと思うけどな。
その内近所から苦情くるぞ。

「これが賞品だぜ!!ひなびた温泉旅行、一泊二日の旅2名様分だぁ!!」

「へっ?」

「えっ?」

俺達はお互いに、顔を見合わせるのだった。