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とある日の妹との休日旅行【番外編】 ( No.53 )
日時: 2013/04/29 17:52
名前: ゴマ猫 (ID: Mx34GQYU)

ようやく部屋に着いた俺達は、少しくつろいでいた。

「いやぁ、2階からの眺めも良いな。空気良いし、来て良かったな?」

「うぅ、私は今すぐにでも帰りたいよ〜……」

先程に比べたら大分マシにはなったが、どうやらまだ恐怖が抜けないらしい。

「まーだ言ってるのか?ほら、さわらぬ神に祟り無しって言うだろ?そんな気にしないでも平気さ。何もしなければ、何もないって」

正直な話しこんな迷信なんて信憑性0だと思うんだが、怖い怖いって思ってるのが、見間違いとか、そういうのを引き起こすのだろう。

「そうだけど……怖いものは怖いもん」

うーむ、どうしたものか……話題を変えようか?

「なぁ、優子ここの温泉すっごく体に良いらしいぞ」

「そうなの?」

「あぁ。肩こり、腰痛、リウマチ等に効果があるみたいだぞ」

「……何だか私にはまだ早いかな」

会話終了。
いつもなら食いついてくるけど、今日の優子はテンションが低いからノリが悪い。

「なぁ優子大丈夫だって。そんなのは迷信だし、もし何かあっても俺がついてるからさ」


「本当に?」

「あぁ本当だ。だから安心しろよ」

「うん……そうだよね。お兄ちゃんが、ついててくれるんだもんね」

小さな、聞き取れないぐらいの声で呟く優子。

「ごめんねお兄ちゃん。心配かけちゃって」

そう言って、少しはにかんだ笑顔は、いつもの笑顔に戻っていた。

「良いって。それよりせっかく来たんだから、楽しまないとな」


その日はもう日も暮れかけていたため、周辺の散策は明日早く宿を出てする事にした。
と言っても周辺にはコレと言った観光名所もなく、ただ自然を満喫する感じになると思うのだが。

夕食時、旅館で出される食事は初めてだったのだが、近辺で取れる山菜を中心としたメニューで凄く美味かった。
そしてこの旅行メインの温泉に入る事となったのだが……。

「別々っ?!」

驚く優子。

「いや、当たり前だろ。お前まさか一緒に入る気だったのか?」

呆れ半分で聞いてみる。

「だって、お兄ちゃんずっと俺がついてるって……」

そう俯きながら言う。

「いや、言ったけど風呂とかは別々に決まってるだろ」

どうやら、恐怖で羞恥心が無くなってるみたいだな。
にしても、浴場も1階ってのは誤算だった。

「でも!!」

「でもも、ヘチマもありません。出たらちゃんと入口で待ってるからさ」

「……うん」


そうして別々の風呂へ。
風呂は露天風呂で、人も居なく、ほぼ貸し切り状態だった。
立ち込める湯気に、温かい温泉、空は一面の星空。
普段は味わう事の出来ない開放感を満喫した。

しばらく湯に浸かり、満足したところで風呂を出る。

着替えを済まし、浴場入口に行くが優子はまだ居なかった。

「ちょっと早く出過ぎたか」

ブルルッ!!

マナーにしていた、俺の携帯が振動する。
ディスプレイには、母さんの文字。
ここは、電波が悪いので俺は外に出る事にした。