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とある日の妹との休日旅行【番外編】 ( No.58 )
日時: 2013/04/29 18:01
名前: ゴマ猫 (ID: Mx34GQYU)

「ったく、母さんも仕方ないな。お土産の要求なんて」

外から戻り、浴場入口に行くが優子はまだ居なかった。
おかしいな……先に部屋に戻ったんだろうか?
考えていても仕方ないし、一度部屋に戻るか。

2階の部屋に戻ると、優子は旅館の備え付けの浴衣を着て、後ろ向きで窓から外を見ていた。

「優子、戻るなら一言メールくれよ。心配するだろ?まぁ外行ってた俺も悪いんだけどさ」

しかし振り向きもせず、返事もない。

「……おーい?優子さん怒ってるの?」

近付いて肩に触れると、やっと振り返る。

「悪かったよ。でも1人で2階まで来れたんだな」

「……」

振り向いてはくれたが、俯いたまま返事はない。
こりゃ相当怒ってるな。

「いや、マジでごめん!!お詫びに何かしてほしい事ないか?何でもするからさ」

「……本当に?」

「あぁ。でも高価な物を買ってとかは勘弁な」

何でもするっと言っても、さすがに学生の俺の財布はそんな豊かではない。

「フフッ。そんな事は頼まないわ」

相変わらず俯いたままではあるが、少し笑ったので機嫌は良くなっているのだろう。

優子はゆっくりと俺に近付くと、倒れ込むように俺の胸に顔をうずめた。

「……なっ、何してんだお前?!」

「兄さんが何でもするって言ったのよ」

何でもするって言ったけど、こんな事は想定外だ。
ってか却下だ!却下!

「いや……あの、こういうのは、やめないか?」

「嫌よ」

そう言うと優子は、いつの間にか俺の腰に回した手を、さらに強くして抱きしめてきた。

「な、何なんだ……?」

何か優子の様子おかしくないか?
いつも甘えてきても、こんな事はしなかったし。

何か引っかかるんだよな。
こう……重大な事を見落としているような気が。

「優子さん……そろそろ離れてもらえませんかね?」

「嫌よ。今日私は兄さんとしたい事があるの」

「したい事?」

何故かは知らないが、背中にゾクッと冷たい感覚が走った。

ちょっと待てよ。
兄……さん?
優子はいつも俺の事、お兄ちゃんって呼んでるのに。
おいおい。
何だかすげー嫌な予感がするんだが。


この後、俺の嫌な予感は見事に的中するのだった。