コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- お見舞い ( No.73 )
- 日時: 2013/04/29 18:37
- 名前: ゴマ猫 (ID: Mx34GQYU)
何だか久々の感じで、俺は妹と食卓についていた。
「何か、久々に一緒に飯食う気がするな」
「最近のお兄ちゃん、バタバタしてたもんね」
小さく笑いながら頷く優子。
やはりこういう時間が一番落ち着く。
前は何も感じなかったけど、いつもと同じってのは凄く幸せな事で、凄く難しい事だと最近知った。
「なぁ、優子……いつもありがとな」
俺の言葉に驚く優子。
「どうしたの?ね、熱でもあるの?」
俺の額に手をあてて熱を計る優子。
「何だよ、俺が礼を言うのがそんなに変なのかよ?」
手を軽く払い、文句を言う俺。
「うーん、変って言うか、おかしい?」
「それは同じ意味だぞ」
言い方変えただけだから。
そんなに俺が礼を言うのは珍しいんだな。
「あははっ、冗談だよ〜それはさておき……どう致しましてお兄ちゃん」
妹に軽くあしらわれてんな俺……。
まぁ、ちゃんと伝わったみたいだし良いか。
翌日の放課後、俺はかおりの家へ来ていた。
かおりは、今日も学校を休んでいた。
俺は心配なったので、久々にかおりの自宅まで来たのだ。
「うぅ、しかしいざ家に着くと緊張するよな」
小学校高学年くらいまでは、よくお互いの家に行ったり、来たりしたもんだが、中学になってからあんま女の子と遊ぶのは恥ずかしいって事で行かなくなったんだよな。
それと、この間の事で気まずいのもあるしな。
玄関前のインターホンを押す。
ピンポーンと言う音が鳴り、しばらくして扉が開く。
「あら、真一ちゃん久しぶりね」
扉を開けて出迎えてくれたのは、かおりのお母さんだ。
昔からとても優しい人で、家の母さんとも仲が良い。
「どうもです」
軽く会釈をする俺。
「今日は、かおりのお見舞いに来てくれたの?」
「はい。かおり大丈夫ですか?」
「うーん、熱がまだ下がらないのよ。でも真一ちゃんが来てくれたら治るかもしれないわ」
微笑みながら言うかおりのお母さん。
「じゃあ、少しだけお邪魔しますね」
まぁ、俺が来て熱が下がるならいくらでも来るんだけどな。
家にお邪魔させてもらい、かおりの居る2階の部屋へ行く。
トントントン。
軽くノックをする。
「かおり〜入るぞ」
返事がない。
寝てるのだろうか?
幼なじみとは言え、女子の部屋に無断で入るのは少々気が引けるが……。
ガチャッと扉を開けてお邪魔させてもらう。
「おーい。大丈夫か?」
「……すぅ……すぅ」
どうやら寝てるみたいだ。
なら起こすのはかわいそうだし、お見舞いの物だけ置いて帰るとするか。
「……真……一」
うぉっ!!
起こしちまったか?
「…………」
何だ寝言か。
「やれやれ、今日ちゃんと謝ろうと思ってたんだけどなぁ」
そんな事を1人呟いてみる。
ってか久しぶりに部屋に入ったが、変わったなぁ〜。
何かこう……女の子って感じの部屋になってんな。
前はもっと、サッパリした部屋だった気がしたんだけどなぁ。
「うーん、人の寝顔を見るってのは中々新鮮だな……」
あんま気付かなかったけど、目鼻立ちが整ってて可愛い系ってより、綺麗系だなかおりの顔は。
ハッ……!!
俺は風邪で寝込んでる幼なじみの寝顔を、凝視して何を考えてんだ?!
そんな事を考えていると、かおりがぼんやりと目を覚ます。
「……あれ?……何で真一が私の部屋に居るの?」
「よ、よう。今日も休みだって言うから、心配で来てやったぞ」
しまった!!
何か動揺して、偉そうに言ってしまった!!
「そっか……ありがとね」
少し弱々しく、お礼言うかおり。
怒る気力もないってところだろうか?
「なぁ、かおりこの間はその……悪かった!!」
もう回りくどい事は、やめて直球で謝る。
「へっ?」
不意をつかれたのか、キョトンとするかおり。
「いやだからさ……この間はせっかくお前が弁当作ってきてくれたのに、文句ばっか言っちまってその、傷付けたみたいで……ごめん!!」
「……それを言うために、わざわざ家まできたの?」
「それだけじゃねぇよ。心配だから、お見舞いも兼ねてだよ」
「……本当に、昔から真一のバカは変わってないよね」
「誰がバカだ。人が心配してきたのによ」
まったく、これだけ悪口が言えるなら心配いらないな。
「本当にバカだね。バカ」
「いや、言い過ぎだろ」
そんなバカ、バカ言われるとちょっとへこむぞ。
「でも……私はもっとバカだ」
聞き取れないくらいの、小さい声で呟くかおり。
「何だって?」
「何でもないよ!!さて、お見舞いは何持ってきてくれたのかな?」
「おう。食べやすい物が良いと思ってゼリーだぞ」
「やった。……うっ……ゴホッゴホッ」
咳き込むかおり。
「おい、あんま無理すんな。寝てろよゼリーは逃げないからさ」
こいつは、昔っからすぐ無理しやがる。
全然大丈夫じゃないのに、大丈夫とか言ってぶっ倒れてしまうのだ。
「……うん」
「じゃあ、俺帰るわ。あんま長居しても落ち着かないだろうし」
無理させて、悪化させたら見舞いに来た意味がないからな。
「待って……行かないでよ」
蚊の掠れるような小さい声で呟き、俺の腕を掴む。
「行かないで……私が寝るまでは、一緒に居てよ」
それはいつもの冗談の雰囲気ではなく、真剣な眼差し。
熱のせいなのだろうか?かおりの頬は赤く、瞳が少し潤んでいた。
「……分かったよ。寝るまでは居るから安心しろ」
ドカッと座り直す俺。
風邪引いてるから心細いんだろうか?
最近は見たことがない、かおりの表情をよく見てる気がする。
「ありがとう。真一……」
そう言うと、安心したかのように眠りに落ちていった。