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紳士協定(かおり編) ( No.79 )
日時: 2013/03/22 21:49
名前: ゴマ猫 (ID: RohPBV9Z)

翌日の放課後、私は三波さんと屋上に来ていた。

風邪は驚くほど良くなり、2日ぶりに学校に来る事が出来た。
だが、かわりに真一が風邪を引いてしまったらしく、ダウンしていたのだ。

何故三波さんと屋上に来たかと言うと、三波さんが真一の事をどう思っているのか、直接聞いてみたかったからだ。

「ごめんね。急に呼び出したりして」

「いえ、私も進藤さんとお話ししたかったですから」

何度見ても、1つ1つの顔のパーツが整っていて、可愛い子だよな〜。
ついついそんな事を思ってしまう。

「ズバリ聞くね!!三波さんは、真一の事どう思ってるの?」

聞きたかった事を直球で聞いてみる。
あぁ〜、緊張するなぁ。

「好きですよ」

にっこりと、周りに花でも咲きそうな、そんな笑顔で頷く三波さん。

うっ、ハッキリ言うなぁ。
そうじゃないかとは、思ってたけどさぁ。

「やっぱり、そうなんだ」

「異性としての好きなのか、そうじゃない好きなのかは私もまだよく分かりません……けど、好きと言う気持ちは間違いありません」

うーん。
何だか微妙なラインだけど、とりあえずライバルって事なのかな?

「そっか」

「私も、進藤さんに言いたい事があります」

急な質問返しに、若干戸惑ってしまう私。
なんだろ……怖いな。

「私は、進藤さんとも仲良くなりたいんです」

「へっ?私?」

思わず間が抜けたように驚いてしまう。

「私、1年の頃から進藤さんの事知ってました。進藤さんを見て、なんて笑顔が素敵で明るい人なんだろうって、ずっと友達になりたいと思ってました」

それで私の名前知ってたんだ。
でも、私と三波さんって話した事なかったような……。

「私と三波さんって、話した事あったっけ?」

ゆっくりと首を横に振る三波さん。

「いいえ、私勇気が無かったから、話しかけれなかったんです」

「でも、三波さんって超が付くほど人気者じゃない?私じゃなくても、友達なんていっぱい居るんじゃないの?」

「いえ、意外と居ないんですよ?学校のみんな優しいんですけど、何処か気を使ってると言うか……私はもっと普通に、お喋りとかしたいのですが」

そうなんだ意外だ。
でもこんだけ可愛くて、気取らなくて、おしとやかだし、料理上手いし。
完璧だと近寄り難いのかな?
欠点だらけの私には、贅沢な悩みな気もするけど。

「進藤さんなら、普通に喋ってくれると思ってました」

そう言うと、小さく微笑む三波さん。

「普通ってどんなのか分からないけど、私は誰にたいしても同じだよ」

だって別に先輩でも先生でもないし、同じ同級生なんだし。

「だから、友達になりたいんです。進藤さんは嫌ですか?」

「嫌じゃないけどさ……その、一応お互い同じ相手が好きな訳でしょ?それって仲良く出来るのかなぁって思ってさ」

「水島さんと私が、一緒にお昼を食べてた時、進藤さんが凄く悲しい顔してたのを覚えてます」

「だったら……」

「でも、私は水島さんとも、進藤さんとも仲良くなりたいんです。どっちか諦めるなんて嫌です……」

何てムチャクチャ。
でも凄く真剣で、真っ直ぐな子なんだな。
もし私が三波さんの立場だったとして、同じ事を言えただろうか?
絶対にそんな事は言えないと思う。

「……はぁ、負けたよ。三波さん」

「じゃあ……」

「友達にはなる。でも、真一の事は競争にしよ?どっちと付き合っても恨みっこなし」

「はい!!」

パッと明るい笑顔で頷く三波さん。
何だか強力なライバルと友達が、いっぺんに出来た感じ。

でもギスギスするより、よっぽど良いか。
夕焼けの屋上に、春の風が優しく吹き、そんな事を感じたのだった。