コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

意外な訪問者 ( No.82 )
日時: 2013/04/29 18:58
名前: ゴマ猫 (ID: Mx34GQYU)

38℃……だるい、体がだるい。

昨日お見舞いに行って、その風邪貰ってくるなんてなんて間抜け……。
学校を休み、俺は1人ベットに突っ伏していた。

優子が帰ってくるまではまだ時間がかかるだろうし、母さんは夜中じゃないと帰らないしな。

孤独死ってこんな感じなんだろうか?
誰にも気付かれず息を引き取る……。
嫌だぁ〜!!まだ死にたくねぇ〜!!

熱のせいか、そんなあり得ない気弱な考えをしていると、窓からコツッと言う音が聞こえてきた。
何だ雨か?
しばらくすると、またコツッと音がする。

ぐっ……人が具合悪いってのに何なんだ?
だるさMAXの体に鞭を打ち、窓に近付いて様子を見る。

窓の下に居たのは、意外な人物、木原日向だった。
窓を開けて話しかける。

「……何でお前がここに居るんだ?」

「せっかくお見舞いに来たと言うのに、随分な言いぐさね……早く中に入れなさいな」

あいつ、何でいつもあんな口調なんだ?
フラフラしながら玄関に行き、扉を開ける。

「……お邪魔します」

靴を脱ぎ、ぺこりとお辞儀をする木原。
部屋に戻ると、俺は力尽きたかのようにベットに崩れ落ちる。

「木原、申し訳ないが、おもてなしは出来ないぞ」

「病人はそんな事気にしないで、黙って寝てなさいな」

相変わらずの淡々とした口調、無表情で話す。

「ところで、今日はご家族はいらっしゃるの?」

「居ねーよ。妹がもう少ししたら帰ってくると思うけどな」

「……そう2人っきりと言う訳ね」

若干、口ごもりながら言う木原。

「それより、何でお前俺ん家知ってんの?」

「調べたのよ。ちょっと学校のパソコンを、ハッキングして名簿を見てね」

学校のパソコンハッキングしてんじゃねぇよ!!
ってか怖えーよ!!
探偵かお前は!!

「……お前捕まるぞ?それに、どうやって俺が具合悪いっての分かったんだ?」

「平気よ、そんなヘマはしないわ。面白い本を見つけたから、あなたに見せようと思って行ったら、欠席だと聞いたのよ」

なるほど。
しかし珍しいな。
木原がわざわざ、俺を訪ねてくるなんて。
ってかダメだ……もうこれ以上は、だるくて思考回路が。

「すまん木原……俺もう話すの限界だ」

「そう、何かしてほしい事はあるかしら?」

「……じゃあ、冷たく絞ったタオルを額にのせてほしいんだが」

そう言うと、木原はカバンからゴソゴソと何かを取り出す。

「安心して。これがあるわ」

ね、熱さまシート?
何でそれ常備してんだ?
木原がぺたっと俺の額に貼ると、冷たい感覚が俺の額を通して伝わってくる。

「すまん。ありがとな」

「リンパの近くに貼ると、体は効率良く冷えるわよ」

「そ、そうなのか?じゃあ貼ってくれよ」

「ダメよ。熱をむやみに下げるのは良くないのよ。ウイルスを滅菌させるために体は熱を上げているのだから」

「そ、そうなんだ」

じゃあ、何故言ったんだ木原よ?

そんなやり取りをしていると、下の階からガチャっと、玄関の扉が開く音が聞こえた。
同時に、妹の声が聞こえてくる。

「お兄ちゃん大丈夫〜?」

下の階から、聞き覚えのある声。
マズくないかこれ?
この状況見られたら、あいつ絶対誤解するよな?
ってか見られたら、当分口聞いてくんないじゃないか?

そんな事を考えている間にも、足音が段々と近付いてくる。
……何とかせねば!!

「……妹さん?ご挨拶した方が良いかしら?」

「いや、木原本当に申し訳ないが、隠れてくれ」

「へっ?何故隠れる必要があるの?」

納得出来ないような顔で、問い掛ける木原。
しかし、いちいち説明してる暇はない。
俺の今後の明るい兄妹ライフの為にも、隠れてもらおう。

俺は熱で体がだるい事も忘れ木原の手を掴み、自分のベットに引き込み布団をかぶせる。

「ち、ちょっと何をしてるの?!」

頬を赤くしながら、叫ぶ木原。

「頼む!!少しで良いから黙っててくれ!!」

……すまんこうするしかなかったんだ。
布団の中で「こんなケダモノとは思わなかったわ」とか色々聞こえてくるが、今は聞かなかった事にしよう。

「お兄ちゃん大丈夫?熱は下がった?」

扉を開けて入ってくる優子。
ふぅ〜間一髪。

「あぁ、もう大丈夫だぞ」

「あれ?何か違う匂いがするね?誰か来たの?」

ギクッ!!
お前は犬かっ!?

「な、何のことだ?気のせいだろ〜」

動揺して、ちょっと棒読みになってしまう俺。

「ふうん……そういう事」

布団の中で木原が呟く。頼むから今は黙っててくれっと心の中で懇願する。

「ん?お兄ちゃん何か言った?」

「いやいや!!ゴホンッゴホンッ!!ちょっと咳がな」

くぅ、マジで心臓に悪い……。
早く扉を閉めて部屋に戻ってくれ!!

「だ、大丈夫?ちゃんと寝てないと」

駆け寄ってくる優子
俺は慌てて止める。

「いやいや大丈夫!!大丈夫だから、ゆっくり寝かせてくれ!!」

「そ、そう?……ん?お兄ちゃん何か、布団変に膨らんでない?」

ギク!ギク!
何て鋭いやつ……。
このピンチどうするべきか?

「い、いやぁ〜何か最近1人で寝るの寂しくてさ。アマ○ンで抱き枕買ったんだよ」

トホホ……何言ってんだ俺。
ってか高校生にもなって1人で寝るの寂しくて、抱き枕買ったとか妹に言う兄貴ってどうなのよ?絶対、変な誤解をされるぞ。

「そ、そうなんだ……そういう時もあるよね!!」

あえて、つっこまずにサラッと流してくれる。
優しさが痛いぞ妹よ。


「じゃあ、私夕ご飯の支度するから何かあったら呼んでね」

パタンと扉を閉めて、下へ降りていく優子。

「……悪かったな。もう出ても良いぞ」

「ふぅ、あなたの事はこれからセクハラ魔王と呼んであげるわ」

ぐっ!!
何だろ? この精神的ダメージ……。
ってか魔王ってなんだよ?
俺はいつの間に、魔界の王になるくらいのレベルの変態に成り下がったんだよ。


「まぁ良いわ。面白い物も見せてもらったし、そろそろ私は帰るわね」

「あぁ、わざわざ見舞い悪かったな」

「……そう言えば、仲直りは出来たのかしら?」

「えっ?あぁ、出来たよ。この間はありがとな」

気にしててくれたのか。
何って言うか、表情や言葉にはあらわれにくいけど、良い奴なんだよな。

「良かったわね。そうそう、これお見舞いの物よ」

謎の茶色の紙袋に入った物を貰う。

「あぁ、ありがとう」

その後、妹に見つからないようにこっそり木原を送り出して、自室に戻った。

「そう言えば、木原のお見舞いの物って何だろう……?」

中に入ってたのは、スッポン生き血ドリンクと、僕の10の罪、と言う小説だった。
個性的なお見舞いの品だな……。
らしいと言えばらしいのだが。

しかも生き血って……。
後、この小説のチョイスに他意はないよね?

何だか熱は下がったのだが、今度は頭が痛くなるのだった。