コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

暗雲3 ( No.91 )
日時: 2013/03/28 21:57
名前: ゴマ猫 (ID: diC/OxdM)

翌日、俺は赤坂に無理を言って、体育館でシュート練習に付き合ってもらっていた。
他の部活の練習が終わってからだったので、結構な時間になっていた。

「ってか、水島」

「ん?」

「俺、手を使う球技は、あまり得意じゃないんだが……」

赤坂は基本的に、スポーツ万能だが、手を使う球技は苦手なのだ。
バスケとか野球は苦手って事か。

「あぁ、知ってるよ。でも俺より運動得意だろ?」

「そりゃ、そうだと思うが……」

珍しく自信なさげな表情をする赤坂。

「まぁ、俺がシュートするから、ゴール下でパスくれよ」

「了解だ」

ゴール下に走っていく赤坂。

「よし。うりゃ!!」

フリースローラインに立ち、ボールを勢い良く放り投げる。
ややライナー気味な軌道を描いて、ゴール手前のリングに弾かれる。

ガンッ!!

「うーん、力が入りすぎなんじゃないか?」

ボールを俺に返しながら、赤坂がアドバイスをする。

「じゃあ、こんな感じか?」

力を抜き、今度は弧を描くように投げる。
先程より滞空時間が長く、パスッという音とともに、リングにボールが吸い込まれていった。

「入った!!」

「おぉ〜!!良い感じだ!!水島!!」

「よし!!感覚忘れないように、次だ次!!」

この後、およそ1時間くらい練習したところで、そろそろ閉めるから早く帰れと言われ、俺達は校舎を後にした。

その日の自宅。
リビングにて、もはや恒例化しつつある、妹の説教をうけていた。

「はぁ、お兄ちゃん、遅くなる時は連絡してって何度も言ってるのに」

頬を膨らまして、ご立腹の様子の優子。

「いや、携帯が……」

「この間から壊れて、使えないんだよね」

言おうとしてた事を、先に言われる。

「だから早く買い直してって言ってたのに」

ますます不機嫌になる優子。

「いや、優子さん、男には負けられない戦いってのがあるんですよ」

もっともらしい事を言って、この場を切り抜けようとしたが、優子はジト目で見てくる。

「……お兄ちゃん。ごまかしてないで、反省してね」

そう言いながら、優子はとびっきりの笑顔で、有無も言わせてくれなかった。
はぁ、早く携帯買い直そう。


そして勝負の日の当日。
対決は昼休みに行われる事になったので、俺はかなり急いで、食堂に行き、昼飯を食べていた。

「水島君」

昼飯に集中していると、後ろから同じクラスの男子、山本君に声をかけられた。

「ん?」

「自販機で間違えて飲めないやつ買っちゃてさ、良かったら飲んでくれない?」

「えっ?良いの?」

山本君、何て良いやつなんだ!!
靴に画鋲入れたり、落とし穴仕掛けるやつに、見習ってもらいたいくらいだ。

「うん。水島君さえ良ければ」

「ありがとう!!山本君!!」

山本君から、ペットボトルのスポーツドリンクを受け取り、俺は昼飯を食べながら飲み干した。


その後昼食を食べ終わり、俺は決戦場所の体育館に向かった。
体育館に着くと、赤坂も気になっていたのか、すでに体育館に居た。

「いよいよだな」

「……あぁ」

「どうした?何か顔色悪いぞ?」

「……何だか、さっきから腹が痛くてな」

変な物でも食べてしまったんだろうか?
さっきから腹が猛烈な勢いで痛い。

「おいおい。今から勝負なのに大丈夫か?」

「……早く終わらせれば大丈夫だろ」

本当はあまり大丈夫ではないが、昼休みの時間は限られているし、不戦敗になるのは避けたかった。
そうこうしてる間に、田中がやって来た。

「ふふん、待たせたな」

ゆっくりと歩きながら、横柄な態度の田中が、俺を苛立たせる。

「……早くしろよ」

「どうした?焦るな、焦るな。まだ15分も時間はある」

ほくそ笑みながら、そんな事言う田中。
こっちは腹痛で大変だってのに!!

「おんや〜?顔色が悪いな。無理しない方が、良いんじゃないか?」

田中は、嫌味100%の声でそんな事言う。

「……大きなお世話だ」

コンディションが最悪の中、田中との勝負が始まるのだった。