コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

暗雲3 ( No.92 )
日時: 2013/03/29 22:03
名前: ゴマ猫 (ID: QXDbI9Wp)

腹痛はかなり酷かったが、なるべく顔に出さないようにしていた。
先行後攻をジャンケンで決め、田中が先行、俺は後攻になった。

「ルールは簡単だ。3本勝負で、決着がつくまでやる」

田中は簡単なルール説明をしながら、用意されていたボールに手をやる。
つまり最初の3本で決着がつかない場合、勝敗がつくまで続けると言う事か。
そう言った意味では、後攻めは有利かもしれない。
まぁ、先に決められるとプレッシャーはかかってしまうが、延長になった時などは、俺が決めればそこで勝負はつくからな。

「よし、それでは始めるぞ」

そう言うと、田中はフリースローラインに立ち、ボールを高々と放った。

ガンッガガン!!
一度リングの奥で弾かれたが、転がるようにしてボールはリングの中に入った。

「ふふん、まずは俺が先制だな」

得意気な顔で、田中は俺にそんな事を言う。

「……ぐっ」

先制点は正直厳しい。
腹痛が酷いため、なるべくなら延長にはしたくないし、上手く投げれるかも不安だからだ。
田中からボールを受け取り、フリースローラインから練習の時の感じをイメージしてボールを放った。

ガンッ!!

リング手前で弾かれる。
痛みで、練習の時のような感じにいかない。

「はっはっ!!どうした水島?口ほどにもない」

相変わらずムカつく声で上機嫌な田中。
すると、そばで見ていた赤坂が俺の所へやって来た。

「どうした水島?何か練習の時よりフォームが変になってるぞ」

「……あぁ、すまん。次は入れるよ」

「おい、その脂汗どうしたんだよ?もしかして体調悪いのか?」

「……いや、何てこたない。ちょっと緊張してるだけだ」

「緊張って……いくら何でも、そんな汗出る訳ないだろ」

バレバレだ。
意地張っても仕方ないか。

「実は、昼飯終わったあたりから腹痛が酷くてな」

俺がそう言うと、赤坂は大きな溜め息をつく。

「はぁ……何で早く言わないんだ?そんな体調悪いなら延期とか出来たろ?」

「いや、延期にしたら田中の事だから不戦敗になる気がしてな……」

「とにかく中止だ。体調ヤバいんだろ?」

そんなやり取りを聞いていたのか、田中が口を挟んでくる。

「ん〜?水島、棄権するか?まぁ俺は構わないぞ。棄権なら俺の不戦勝だからな」

待ってましたのごとく、不戦勝の話しをしてくる田中。
腹立つ!!絶対棄権なんてするか!!

「やかましい!!棄権なんてする訳ないだろ!!」

「おい……水島」

赤坂は心配そうな表情で俺を見てきた。

「……大丈夫だ。もう少しなら」

かなりのやせ我慢だが、ここで棄権はしたくない。
田中にデカい顔されるのはゴメンだった。

そうこうしてる間に、田中が2投目を放った。
ボールはまたしても、リングに当たりつつもゴールに入った。

「はっはっは!!リーチだな水島!!次、お前が外したら俺の勝ちだ」

「くそっ……負けてたまるか」

痛みを意地で抑えこみ、俺が放った2投目は、ようやくパスッと言う音ともにリングに吸い込まれた。

「よしっ!!」

「ふん、どちらにせよ次俺が決めれば勝負は決まりだ」

そうなのだ。
次に、田中に決められてしまえばそこで終了。
3投目を俺が投げる事はない。
心の中で、外せ、外せと念を飛ばす。

そして、運命の3投目を田中が放った。