コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ある日の昼飯 ( No.97 )
- 日時: 2013/04/29 19:24
- 名前: ゴマ猫 (ID: Mx34GQYU)
昼休み、今日は学食でも食べるかっと思っていると、赤坂に呼ばれる。
「おぉーい。水島、下級生の子来てるけど、お前の事待ってんじゃねぇの?」
「うん?」
廊下側の扉に目をやると、黒髪ロングの人見知り少女、木原日向が居た。
「おい……あの子って。俺達が図書室に忍び込んだ時に居た子だよな?」
そういや、赤坂はあれ以来木原に会ってないのか。
「あぁ。あの時から時々話すようになって、だけどわざわざ来るなんて珍しいな」
そう言えば見舞いに来てくれた時、教室に来たとか言ってたよな。
本を見せたかったとか言ってたけど、他に用事でもあったのかな?
「おい……水島。あんまりあちこちで仲良くなって、問題起こすなよ?」
「ん?何の話しだよそれ?」
時々赤坂は、よく分からん事を言うな。
「いやいや……お前、進藤さんと三波さんの事で揉めたばかりだろ」
「あれは、俺がいつもの感じで弁当の感想言って傷付けただけだし……ってか、かおりも三波も赤坂が考えてるような仲じゃないよ」
かおりとは幼なじみで、仲良いってだけだし、三波は助けてもらったって恩義を感じてるだけだしな。
「お前は女心ってのが分かってないな……あんまり鈍いと刺されるぞ?」
そう言うと、赤坂は大きな溜め息をつく。
「悪かったな。俺は赤坂みたいにモテないんでね。余計な勘違いすると悲しくなるだけなんだよ」
若干、皮肉混じりにそんな事言ってみる。
「余計な勘違い?」
「ふっ……今まで何度そんな勘違いをしたせいで、枕を涙で濡らした事か」
「ヨダレの間違いじゃないか?」
「違うわいっ!!」
「やれやれ、お前が相手じゃ進藤さんも苦労するわな」
そんな赤坂の言葉を背中に受けながら、木原の所に行く。
「よっ。木原今日はどうしたんだ?」
「風邪は良くなったみたいね。今日のお昼は暇かしら?」
「おう、これから学食に行こうと思ってた所だ」
「そう。なら今日は私と一緒に食べない?」
おっ珍しいな……。
ってか、ここ最近よく話しかけてくるよな木原のやつ。
「別に構わないぞ。学食か?」
木原は首を横に振る。
「購買でパンを買って、図書室で食べましょう」
えっ?何で図書室?
飲食禁止だろ? それに会話も出来ないし。
「図書室はマズいんじゃないか?」
「平気よ。こっそり食べれば問題ないわ」
いや、あるから!!
こっそり食べれば問題ない訳じゃないから!!
なーんか木原って感覚ズレてんだよな……。
「木原……頼む、中庭にしよう」
「……仕方ないわね」
木原はやや不満気だったが、何とか聞き入れてもらって俺達は購買でパンを買い、中庭にやってきた。
木陰になっているベンチに座り、買ってきたパンを頬張る。
「そういや、この間はありがとな」
「ふん……別に気にしなくていいわよ。それよりお見舞いの品は、役に立ったのかしら?」
あぁ……あれね。
あの小説半分まで読んだら、何か凄い落ち込んできて、生き血ドリンクは怖くて冷蔵庫の奥にしまってあるとは言えない。
「あ、あぁ。そりゃもうバッチリだぞ」
そう言うと木原はクスリと笑って、問いかける。
「なら、あの小説の感想はどうだった?生き血ドリンクの味は?」
「うっ……すまん。小説は半分で挫折して、生き血ドリンクは怖くてまだ飲んでない……」
「嘘が下手ね。すぐ顔に出るのだから、下手な嘘は止めた方が良いわよ」
うっすらと笑みを浮かべる木原。
どうやら怒ってはいないようだ。
「あれ?水島さんもお昼ですか?」
不意に、後ろからかかる透き通る声。
人気No.1少女、三波風香だった。
「よう。三波も飯か?」
「はい。今日は天気が良いので中庭で食べようと思いまして……隣り良いですか?」
「あぁ……かまわ」
言いかけた所で、脇腹をつねられる。
振り返ると、木原は無言の表情で俺を睨んでいた。
「……誰?この女」
三波に聞こえないくらいの小さな声で、俺に話す木原。
「……同級生だよ。ってか何だその浮気見つけた彼女みたいな反応は?!」
「…………」
俺がそう言うと押し黙ってしまった。
「えぇーと、水島さんそちらの方は?」
やや困惑気味に問いかけてくる三波。
「あぁ、後輩だよ。最近仲良くなったんだけどな。木原ってんだ」
「そうなんですか。私、三波風香って言います。よろしく木原さん」
丁寧な自己紹介をして、素敵な笑みで語りかける三波。
「……どうも」
人見知りっ!!
ふてくされたように木原は、無愛想な表情と返事で返した。
「……あぁ、こいつちょっと恥ずかしがり屋でな。そこは許してやってくれ」
「いえ、全然大丈夫ですよ。お二人はよくお昼一緒に食べるんですか?」
「いや、今日がはじめ」
言いかけた所で、木原が割り込んでくる。
「よく一緒に食べるわ。それでこの間は、先輩の家にお見舞いに行って、そのまま看病しながら、お泊まりしたの」
「…………」
穏やかな昼時の空気が、一瞬にして凍り付く。
「な、何言ってんだーっ!!お前ぇ!!」
捏造してんじゃねぇ!!
お前すぐ帰ったじゃねぇか!!
「……水島さん」
いつもの優しく、透き通る声が、逆に怖さを引き立てる。
「……私そう言うの、いけないと思います。水島さんが本気なら私は応援しますけど、軽い気持ちでそんな事するのは許せません」
えっ?
な、何この濡れ衣で冤罪な感じは?
「いや違うから!!そんな事実はありませんよ!!」
全力で否定をするが、若干パニクって敬語が混じってしまう。
「じゃあさっき言っていたのは、木原さんの嘘なんですか?」
「全部が嘘ではないけど……一部事実と異なってるな。昼飯も今日初めて一緒に食ったし、それに見舞いの時も泊まってないし、木原はすぐ帰ったんだよ」
なるべく誠意を込めて、真実を話した。
嘘でもついたら、大変な事になりそうだ。
三波はふうっと溜め息をつく。
「……そうですか。すみません取り乱してしまいました」
三波はぺこりと頭を下げると、校舎の方へ向かって歩き出す。
「おい……飯食べないのか?」
俺がそう問いかけると、三波は柔らかい笑顔で応じる。
「今日は、お友達と食べます」
「……そっか」
何だかモヤモヤするが、引き止める言葉も見つからない。
三波は、ゆっくりと俺達から離れていった。
「おい、木原何であんな嘘言ったんだよ?」
木原を問い詰める。
「何か悔しかったから、見栄をはったのよ」
えぇ!?
何その理由? さっき結構な修羅場になりかけたんだよ? 木原さん。
「見栄って何だよ?それに、お前いつも俺に下手な嘘つくなって言ってるじゃん」
「時と場合によるわ。臨機応変って事ね」
いや、捏造して誤解を招くのは臨機応変ではないのでは?
そんなスリルある、木原との昼飯タイムを過ごした俺だった。