コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

壱話 雨月高校七不思議 ( No.15 )
日時: 2013/03/10 01:10
名前: 水岡月緒 (ID: joK8LdJj)

「で、何から話せばいいんだっけ?」

正直話なんてどうでもいいんでさっさと帰してくれ。ゴーホームゴーホーム。
しかしながらルーラもテレポートもエスケープも習得していない私は、幸村と一緒にれいとうビームを送りながら座っている事しか出来ない。秋雨の周囲だけ氷河期にタイムスリップさせる事だけがささやかな抵抗の意思表示だ。ホットケーキを口に押し込んでるりんが雰囲気お花畑になってる事もあり、何というか、物凄くカオスになってる。

「何の用」

数分前のセリフを、壊れかけのレディオだって出さないだろう声でリピートした幸村。徳永英明とは我ながら少し渋い気もするが、私はガキ使より紅白派だ。何より昔が昔だ仕方ない。

「ああ、その事について話す前に、ちょっと聞いてもらいたい事があるんだ」

この学校なんだけど、とまで言って、秋雨は向かいのソファーから立ち上がる。

「今日入学式だったし、気付いてるとは思うけど」
「……何を?」
「……妖怪が多い」

正解、と秋雨は前髪を弄びながら言った。

「確かに、体育館入った時は場所間違えたかと思ったよ」

雨校は募集定員が少なく、確か180人位だったと思う。
その180人のうち、少なくとも幸村を入れて100人は人外だ。妖怪だか幽霊だか都市伝説の亜種だか知ったこっちゃないが、確実に人間の方が少ないってどういう事だ。外見がいくらまっとうでも、妖怪に関してはシャーロック・ホームズだって足元にも及ばない私の霊感は誤魔化せない。

「俺みたいなのは、流石にいなかったけど」
「そうなの?」

……そういや十五年プラスアルファS級霊媒体質やってるけど、幸村みたいな妖怪同士の混血って会った事ないな。
ちなみに幸村は妖狐と死神という、馴れ初めが謎すぎる両親のせいかルックスも特例だ。
何しろボッサボサの銀髪に右目は金、左目は紫の所謂オッドアイだ、100m離れてたって間違えようがない。顔はいいのに派手ってレベルじゃない色彩のせいで色々と台無しだと思う。

「でも俺、吸血鬼と雪女のハーフって聞いた事あるぜ」

ホットケーキ取り返してご満悦だったりんが、一脚だけあったパイプ椅子の上で足をぶらぶらさせた。

「吸血鬼っていうと私、秋雨しか思い浮かばないな」
「僕は半妖だけどね」

ハーフって点では大して違わないと思うけど。でも雪女との方は知らないけど、容姿は幸村より黒髪黒目の秋雨の方が万倍平凡だ。

「とにかく、この学校は今言った通り妖怪、つまりはオカルト現象も多いんだよね」
「「……何が言いたい」」
「要は、そのオカルトへの対策、っていうより退治か。それがうちの活動内容なんだ」

研究はどうした。

一瞬で喉までせり上がって来たツッコミを死ぬ気で飲み込む。何といっても相手は、ぱっと見策士のくせに装備は交渉術ではなく足技と罵声な秋雨だ。情け容赦のなさならSWATも巣鴨プリズンもどん引きの秋雨だ。地雷と分かっててもボケに飛び込むような真似は、ツッコミ担当のお笑い芸人にでも任せておけばいいと思う。

「……で、とどのつまり私達がどう関係するわけ」
「だから焦らなくても、ちゃんと説明するから」

短気は損気、急いでもいい事ないよ、と似非策士は傍の本棚から何かの冊子を取り出した。タイトルは『新聞部誌No.30 雨月高校七不思議』。

「ちょっと依頼が来ててね。七不思議解明、生徒会と教師陣の面目の為に協力して欲しいんだ」