コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 危険な猛獣(♂)拾いました。【*アンケート開始っ!*】 ( No.175 )
- 日時: 2013/04/07 22:39
- 名前: 珠紀 (ID: hDIDYMPI)
〜陽斗side〜
それにしても、遅い。
遅すぎる。
時間はもう22時を回っていた。
もしかして…。
大と奈々ちゃん、帰らないとか。
頭をブンブンとふる。
奈々ちゃんはそんな卑猥なことするような子じゃない。
いや…でも無理やり。
「あー!!!」
落ち着かない。
俺は傘をもち外へ出た。
帰ってくる気配はない。
「…っくそ」
俺は夏祭りが行われている神社に駆け出した。
…神社に着くと、人の気配はもうない。
だけど神社のほとりのところに人影が見えた。
「奈々ちゃんっ!」
奈々ちゃんの隣には大がいない。
びしょ濡れの奈々ちゃんだけがぽつりと立っていた。
「奈々ちゃん…」
そっと傘をさす。
奈々ちゃんの唇は青紫色に肌は白くなっていた。
「…っっ」
「あっは…大ちゃん来なかったみたい。どうしたんだろうね?」
無理に笑う奈々ちゃんが痛々しかった。
「…っ!」
傘を放り投げてギュッと奈々ちゃんを抱きしめる。
身体はカタカタと震え冷えきっていた。
「なんで…」
“なんで…こんな時間まであいつを待ってたんだ…”
そう言おうとして口ごもる。
なんで…?
そんなの、奈々ちゃんが大を好きだから。
こんなにお洒落して、ワクワクして待ってたんじゃないか。
…そう思うと胸がドスンと傷む。
痛ぇ…。
苦しい。
こんなに好きなのにっっ
俺なら…
「俺なら…奈々ちゃん。…奈々にこんな思いさせないのに」
そう呟いていた。
奈々ちゃんの手が俺の背中に回る。
愛しい。
守りたい。
泣かせたくないっっ
俺は力いっぱい抱きしめる。
雨音に混じり奈々ちゃんの泣き声も響いた。
そっと離して、顔を見つめる。
俺がいない間も泣いたのだろうか?
目が少し赤くなっていた。
瞼にソッとキスをして雫を拭う。
「はる…と」
奈々ちゃんが俺の名前を呟いただけで、身体がゾクッと震えた。
「奈々…」
顔をゆっくり近づけて、唇を重ねる。
「ん…」
吐息が重なり合い俺達は雨の音へと沈んでいった。
その時近くにいた足跡も気づかずに…。