コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 危険な猛獣(♂)拾いました。【*アンケート開始っ!*】 ( No.223 )
日時: 2013/05/08 20:11
名前: 珠紀 (ID: l5XoqW5Y)

ーパンッー

誰かが私に向けた陽斗の手を払いのける。

「させない…陽斗、もうやめろよ」

…大ちゃん。

「条件を出したのは奈々ちゃんだよ?…なんなら三人で遊ぼうか」

「三人で?」

「この休み時間が終わるまで俺を捕まえたら聞いてあげる。それができなかったら俺が奈々ちゃんをもらう…簡単でしょ?」

陽斗は足が速い…。

そんなの、私じゃ無理だよ…。

「…まぁ捕まえられたの話だけど…」

そう言って陽斗は走り出す。

「陽斗…!」

大ちゃんは私の方を見て頷き、陽斗を追う。

「あ、なんだ…大やる気なんだ。体育で俺との競走勝てなかったくせに」

私も陽斗たちと逆方向に走りだし、目的地へ向かった。







案の定、陽斗はきた。

「やっと来たね」

「…大にここまで誘導されてたって訳か」

また陽斗は私と逆方向の向きに走り出す。

「待…っ」

追おうとするとスルッと首から何かが落ちた。

小さい頃、大ちゃんからもらったネックレス。

毎日つけていた…。

排水溝に転がりおちる。

「…残念だったな。俺の勝…っっ」

だけど私はとっさに陽斗に抱きついた。

「ぇ…?」

「っ…話、聞いてもらうからね…陽斗」

「おまっ!早くしねぇとネックレス一生見つからねぇかも知れないんだぞ!!?」

「今は陽斗でしょ!?手を伸ばすなら陽斗でしょ!?」

ぎゅっと陽斗を抱き締める力を強めた。

「…大事なんだよ?陽斗も。私は大ちゃんが好きだけど、陽斗も好きで大事な友達でどっちも失いたくなんかない…っっ」

陽斗は抵抗を止め動きを止めた。

「…知ってたんだよ俺…奈々ちゃんが大を好きなこと。だけど渡したくなくて…たくさん嘘ついて…」

「バカだな…お前」

声の方を振り向くと大ちゃんがいた。

「なんだよ…大だって思ってたんだろ?陽斗は弱い汚い奴だっ…っって!!」

ガツンと鈍い音が鳴り響いた。

「いってーなっ!?頭殴るんじゃねーよ!!!」

「うるさい…お前がバカだからだ。俺は弱いとか汚いとか…そんなの思ったことなんてない。鈴木はただ奈々が好きな気持ちが大きかっただけだろ。俺にとってもお前は大事な友達だ…今度自分を卑下したらまた殴るからな」

グッと拳を固くして陽斗は大ちゃんを見つめた。

「大…俺…」

モゾモゾと口を開く。

「お前キライ」

…え???

出たのはそんな言葉だった。

「…かなわねぇもん………………奈々ちゃん、今までいっぱい困らせてごめんね。…絶交のことだけど」

「ん?ゼッコーって何?」

私は笑顔で陽斗を見上げた。

陽斗の瞳に雫がたまって、ホロリと流れ落ちた。

そして、にっこり笑顔をつくり私たちを見つめる。

「…ありがとう…」

…陽斗の笑った顔は前のような明るい顔だった…。