コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 彷徨いメイズ〜いつか自分を失う日まで〜 ( No.1 )
- 日時: 2013/03/23 21:18
- 名前: 椎良 (ID: EtUo/Ks/)
第1話
5月13日。私たちの穏やかだった高校生活は、この日起こった事件により大きく一変する。
*******
「おーい、全員静かにしろよぉー。休日明けなのは分かるが気持ち切り替えろー」
「「「「はーい」」」」
高校生活3年目の彼らは、切り替えが早くなっている。
先月にクラス編成で新しいメンバーになったこのクラスだが、だいぶ全員が馴染んできていた。
担任の立石は、満足そうに笑みを浮かべる。
「じゃあ、出席をとるー」
窓側の一番後ろの席に座っている鈴宮柚月は、じっと窓の外を見ていた。
南校舎の屋上のフェンスに、2、3羽ほどカラスが止まっている。
それをボケーッと眺めていると、
「ん?あれ、紺野は今日休みか?」
不意に立石のほうを向いた。
(紺野君、休みなんだ)
そう思いながら、また窓の外へ視線を戻した。
教室の中は、少しざわつく。
「えぇーまじかよ!紺野いねぇーと漫才できねーじゃん!!」
クラスの仕切り役・宮脇順吾がつまらなそうに大きな声をあげる。
それを、気の強い少女・鈴木香音が呆れながら言い返す。
「バッカみたい。そんなどうでもいいことに時間費やしてんの!?」
香音の発言に、順吾は怒った。
「なんだと!ったく、女子ってすぐそう言うよなっ」
「ちょっと朝っぱらから言い合うのやめてよ!」
すぐに二人の間に入ったのは、読者モデルをやっている緋山里歩だ。
里歩は、柚月の親友である。
立石もそれを見て、「そうだぞ、今は朝のHRだから静かにな」と一言、言葉を発する。
二人はすぐに黙り、姿勢を向き直した。
里歩はホッと胸をなでおろす。
「それにしても、紺野が休むなんて珍しいな。家からは何も連絡がないが・・」
そこまで言い、立石は次の内容に移った。
******
昼休み————。柚月はお弁当を持って里歩のところへ行った。
「里歩、食べよ」
「うん。あ、久々に屋上で食べない?天気もいいし」
「いいね、行こ行こ!」
二人はそのまま、屋上へ向かうことにした。
昼休みの使用が認められているのは南棟の屋上だけなので、そこへ行く。
すると、屋上へつながる階段のところで、やけに生徒たちが集まっている。
柚月と里歩は、生徒たちの間を抜けて屋上の扉の前に行った。
そこには、宮脇たち男子グループや香音たち女子グループがいる。
里歩はすぐにたずねる。
「どうかしたの?」
「なんかドア開かねえんだよ。鍵は開いてるんだけど、なんか外側からガムテープかなんかで固定されてるみたいだ」
宮脇がドアを指さしながら説明してくれた。
柚月は怪訝そうにドアを見る。
「開かんないのかなー」
ためしにドアを引いてみたが、やはり粘着のようなもので固定されていた。
でも、もう少し力をいれたら開きそうな気がした。
柚月は頑張ってドアを引く。見ていた宮脇たちも、一緒に手伝った。
2、3人ほどでドアを思いっきり引くと、バンッとドアが開く。
「ふぅー…」
「柚月おつかれ。早く入ろう」
「そうだね。でも何でドアがこんなことになってるんだろ」
「どうしてかな」
「ま、それはあとでいいね」
そう話しながら、柚月と里歩は屋上へ出る。
出た瞬間、4、5羽のカラスが一斉に飛び立った。
「うわっ!」と驚きながら声をあげる。
「ビックリした・・・」
そうつぶやきながら、柚月はフェンスのほうへ視線を向ける————————————————
「えっ」
フェンスの下に横たわる生徒———。
大量の血を流していた。
それは間違いなく、
「紺野・・・・・・・・・・・・くん・・・」
瞬間、屋上が騒ぎ出した。