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Re: 彷徨いメイズ〜いつか自分を失う日まで〜 ( No.12 )
日時: 2013/03/28 07:14
名前: 椎良 (ID: EtUo/Ks/)



第12話


昨日の今日で、教室の空気は一段と重くなっていた。
そんな中、1限目のチャイムが鳴る。



すると、



「すいません!!遅れましたっ」



鈴宮柚月が、息をきらして教室の中に入ってきた。
古文の先生は、何も言わず、目で「はやく席にすわれ」と合図する。



「はぁーっ」


「めずらしいね、柚月が遅刻してくるなんて」


尋ねてきたのは、柚月の親友で読者モデルをやっている里歩だ。
彼女は、昨日だいぶつらそうだった。
よく見れば、うっすらと目の下にくまがある。


「まぁね………」



(奏の家で朝まで寝てたなんて死んでも言えない・・・)



「それより、里歩、大丈夫だった?」

「うん、今は平気。でも昨日は撮影サボっちゃった」

「本当?」

「だってこんな顔だし、無理だよ。撮影なんてできたもんじゃない…」

「そっか…」


里歩に同調して、急にどんよりした気分になる柚月。


「柚月こそ、昨日どうだった?」

「なにが?」

「なんか朝からひっそり噂がたってたよ。昨日、矢沢君と柚月が手をつないで帰ってたって」




————————うわぁ…。




「まさか!違う違う!どうせほら奏の女でしょ?あいつたくさん彼女いるから」

「あーやっぱり?私も絶対そうだよなぁって思った」

「うん・・・」



(よし…なんとか誤魔化せた)


その後、1限目が終了し、2限目、3限目、4限目———。
つまらない授業は、いつも以上につまらない。
そして、時間はあっというまに過ぎていき、帰りのHRになると、


「えー・・・今日は紺野のお葬式がある。全員、礼服または今着ている制服で行くこと」


担任の立石が、冷静にそう語る。
まさか、帰りのHRでこんな話をしなければならないなんて思っていなかったことだろう。


「みんなも知っての通り、紺野悠人は——他殺だ」


みんなが息を殺す。

驚く者はもう一人もいなかったが、改めて聞くと、やはり現実的に受け入れにくかった。


「この事件のことは、今後は警察が調べていくようだ。まだニュースにはとりあげられていないから、他人に話してはいけないからな」


1人1人が、時間差でコクッとうなずく。



「それでは、今日はここまでだ。気を付けて帰れ」


そう言って、立石は教室から出ていく。

すると、仕切り役の宮脇が急いで教卓の前に立った。
みんなが、不思議そうにその光景を見る。


「今からこの放課後の時間は、事件の調査会議にする」


宮脇の発言で、香音が「はぁ!!」と文句をぶつけた。


「なにそれ。あんた子供なんじゃないの!?あたしらが首突っ込むような話じゃないって昨日栗谷に説教されたでしょ!」


そういって、香音は強い目でクラス副委員長の栗谷知佳を見た。
知佳は、気まずそうに目線をそらす。


「それに事件のことは警察が調べれくれるじゃない」

「別にこの会議には全員が強制的に参加とは言っていない。この会議をバカげたことだと思う奴は帰ってかまわねぇよ」


「あっそ。じゃあほら、みんな!かえろー」


香音がクラス全体を見回してそう言った。


しかし——————



「ちょっ・・・なんで誰も動かないのよ!」


全員が香音から目線をはずして、じっと席に座っていた。
香音はカッとなったらしく、乱暴にカバンをからってイライラしながら教室を出て行った。



「はぁー。厄介者は去ったわけだな……。それよりみんな、ありがとう」


宮脇が笑顔でお礼を言う。
クラス全員も、やはりこの事件の真相が気になるのだ。



「それじゃあ、今から俺のつかんだ情報を言う」