コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 彷徨いメイズ〜いつか自分を失う日まで〜 ( No.13 )
- 日時: 2013/03/28 07:56
- 名前: 椎良 (ID: EtUo/Ks/)
第13話
———奏宅マンションにて・・・
「あれっ柚月。来てくれたんだー」
「来たっていうか———…ちょっと!こい!」
学校からそのまま奏の家にきた柚月。
玄関で適当に靴を脱ぐと、すぐさま奏の襟をつかんでドカドカとリビングに向かう。
柚月はソファに座り、腕を組んで奏を睨みつける。
「奏、宮脇君に情報提供した?」
「え〜なんのこと〜」
「わざとらしいッ!」
「へいへい、すんません…。んま、そのとおりだな」
「宮脇君が、今日の調査会議で奏と同じこと言ってたの」
「調査会議?ま、いいか—————…そりゃー俺が教えたからな」
「なんでッ!!」
柚月が怒鳴りつける。
奏がほんのわずか躊躇した。
「いやー俺が紺野の死を知らないと思ったみたいで、そのことメールで教えてきたからさぁ、じゃあお礼に紺野の死につながること教えてあげようって思ったわけ」
「それで、あんな嘘っぱちな情報を教えたってこと?」
「そうそぉ——って、嘘っぱちとは失礼な」
「はぁーあ!もう宮脇君が探偵気取りであんなこと得意げに話すからさぁ、みんな信じ込んじゃった」
「いいんじゃねーの、それも俺のおかげだし〜」
「どこがッ!!そのあと大変だったんだから!!」
「は?なんかあった?」
「犯人は絶対的にここの学校の生徒だって決まりきったの」
「なんでだよ」
「あの話で犯人が少しは良心を持っていたとして、最後に綺麗な空を見せるってことは、それができるのは生徒だけ」
「んー…要するに、屋上で綺麗な空を見れる位置を知ってるのは、屋上を使用できる生徒だけってことか?」
柚月がゆっくりうなずいた。
「それさぁ生徒だけに限るかぁ?教師とか学校関係者とか」
「いやだって普通さ、屋上使うのって生徒ぐらいじゃない?今まで一度も先生たちが来るの見たことないし」
「けどほら、野球部とかよく屋上で筋トレしてるだろ」
「あー立石先生の案でね——————・・・えっ・・・・」
「くくく…立ティ怪しいかもなぁ」
「た、確かに…立石先生は野球部の顧問で、紺野君は野球部の主将」
「接点は確かにあるな。立ティも部活では鬼って聞くし」
「でもそれなら・・・普通は、生徒が先生に恨みを持つんじゃない?」
「その逆もあんじゃねーの」
「ってかこれ、もう立石先生が犯人っていう前提じゃん…」
あまり話し過ぎると担任の先生を疑いそうになるので、柚月は話を中断した。
すると、奏がポケットからケータイを出して誰かに電話をし始める。
「あー俺、もうちょい待ってて。すぐに行くからさ、あぁ、そうそう、そこで。じゃぁな」
ピッと通話を切り、それをポケットにしまった。
「どっか行くの?」
「あぁ、デート」
「はは…相変わらずアンタは………次の彼女は何代目ー?」
「さぁな〜。そんなの数えるうちににすぐに違うヤツに飛ぶから」
「うわ…最低」
「何とでも言え。はぁーやっとこっちに来てから遊べるー」
「昨日来たばっかじゃん…」
「俺には遊ばない日なんてねぇーんだよ。1日遊ばないだけで2か月ぐらい感じるゎ」
(それもう…病気ね)
ため息をつきながら、柚月も立ち上がる。
「そんなら私も帰ろう。今日、紺野君ちでお葬式だよ」
「へー」
「へーって……ちょっと待ってよ!!奏、行くんでしょ?」
「だから今日デート入ってるって」
「はぁ!?なに考えてんの?親友の葬式よりもデートが大事なの?」
「仕方ねーじゃん。こっちが早かったんだからよ」
呆れた。その言葉以外、浮かび上がるものは何もない。
柚月は髪をクシャッとかきあがる。
気が動転したような顔で、何度もため息をつく。
「奏にはさ、数えきれないくらいの彼女はいても、数えきれないくらいの友達はいないんだね」
柚月の強い瞳が、奏をとらえる。
奏は、何も言わずジッと柚月を見た。
「ばいばい」
そう言って、奏の横を通り過ぎて玄関に向かう。
胸の中がいっぱいで、しっかり靴が履けない。
奏の足音が聞こえる。
急に怖くなり、あわてて玄関を飛び出した。
走って、走って、息がきれるくらい走った。