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Re: 彷徨いメイズ〜いつか自分を失う日まで〜 ( No.4 )
日時: 2013/03/24 19:59
名前: 椎良 (ID: EtUo/Ks/)


第4話


生徒たちの視線を無視して、宮脇は香音を見た。


「そういうお前が、犯人じゃねぇーの!?」

「は、待ってよ。どう考えてもあたしはシロでしょ?」

「じゃあ、なんでお前…昼休み誰よりも先に屋上の扉の前にいたんだよ」

「あ、あれは…たまたまよ」

「どうだか。そういやあのとき何か焦った顔してたよなお前。今、俺にこうやって注目集めさせてんのも、自分が免れたいだけだろ?」


宮脇が怖い笑顔を浮かべて香音を見やる。
香音はカッとなって「いいかげんなこと言わないでよ!」と怒鳴った。


「あんなの偶然じゃない!それにアタシが焦ってたのはもっと別のことよ!」

「本当かよ。それにお前、いっつも何かと紺野に突っかかってたよな」

「何それ。今言うことじゃないでしょ」

「俺から見れば、鈴木って本当はみんなから慕われたいってカンジだし。みんなに信頼されてる紺野に嫉妬してたんだろ?」

「ふざけないでよッッ!キモいんだよ!!」

「おめぇのほうがキモいゎ!鈴木には、紺野を殺す動機がたくさんあるだろ!」


二人の言い合いはヒートアップするばかり。
柚月は、心配そうに二人を見ていた。
すると、そこに、クラス副委員長の栗谷知佳が割って入る。



「ちょっと二人とも、やめてようよ!みんなの中に犯人がいるわけないじゃん!!それに、これは私たちが突っ込むような話じゃないよ」


悲しむ知佳の顔。
香音と宮脇は、言い合いをやめて、複雑な表情を浮かべる。



「ヤバい俺……自分がこんなこと言うなんて思わなかったわ」


後悔するように両手で顔を覆い、かがみこむ宮脇。
香音は、特大のため息をつくなり、自分の席に座った。




みんなが重苦しい空気の中で、複雑な思いを抱いている時————



ガララ…



教室のドアがゆっくり開いていく。
みんながビックリして、一人の生徒が「誰ッ!?」と叫んだ。


「もしかして紺野!?」

「やだバカ!!やめてよ!!」


女子生徒が悲鳴をあげる中、教室のドアは全開にひらく—————。








    そこには、一人の少年が立っていた。









            「奏っ!」





誰よりも先に、少年の名を口にしたのは、柚月だった———————————。




「おぉーっす。開花学園のみんな!久しぶりーっ」




顔をあげる里歩。口をパカッと開ける香音。

生徒全員が呆気にとらわれる。
かがみこんでいた宮脇が立ち上がり、おそるおそる言葉を発した。


「もしかして、矢沢!?……矢沢奏か!?」

「ピンポーン。元気にしてたか、宮脇」

「嘘だろお前・・い、生きてたのか?」

「ったりめぇだろー。勝手に死なせんなよ!」


突如現れたイケメン顔の少年———矢沢奏。
誰もを惹きつけるその顔が、穏やかに微笑む。


「みんなぁー。俺の顔覚えてるー?高1の夏にいなくなった矢沢でーす!あ、転校生とかは知らねえかもな」


能天気な口ぶりに、生徒たちはまだ、現状を把握できないままだった。