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Re: 彷徨いメイズ〜いつか自分を失う日まで〜 ( No.8 )
日時: 2013/03/26 18:13
名前: 椎良 (ID: EtUo/Ks/)



第8話


—————奏の引っ越してきたマンションにて・・



「奏ーっ、この本棚どこにおけばいいー?」
「適当でいいよ」
「このテーブルどこがいいかなー?」
「適当でいいよ」


ガタンッッ



柚月は、組み立て式のテーブルを思いっきり床に落とす。
ソファでケータイのゲームをしていた奏が、驚いて振り返った。



「さっきから、さっきから………自分はゲームばっかりして、私が物の配置聞いても適当にって…」

「えーだめー?」

「駄目に決まってるでしょぉーがぁ!こういうのは住む本人が決めないと!」

「めんどくせー」

「ひどい怠け者ぶりねー!手伝ってと言っておきながら、人に全部やらせて!」

「だって女子のほうが整理整頓うまいっしょー」

「ぢゃぁ、他の女の子に頼んでよね!あーもう頭きた!帰る!!」

「え〜いいのっかなぁー?CDはぁ?」

「弁償して明日返す!じゃ・あ・ねッッ」


憎らしい表情で言葉を返し、柚月は、カバンを持って部屋を出ていこうとする。


「あーぁッ!なんであんなヤツの引っ越し手伝いなんか!ていうか、こんなことやってられる場合じゃないっての」


————————今日、あんなことがあったっていうのに…………。


それでもここで手伝いなんかしているのは、今日のことを、少しでも忘れたかったからなのか。
柚月は、玄関で革靴を履きながら、考え込んだ。



(紺野君は——…誰に殺され、・・・・)



その先をつぶやこうとした瞬間、背中にドォッと重みを感じる。



なぜか、奏から抱きしめられていた。



「本気で帰んなよ————。まだ荷物残ってるんですけど」


柚月の背中に顔をうずめて、力なさそうにボソボソとしゃべる奏。
一方、柚月は———というと、だいぶ赤面していた。


「だから、ほかの子に頼んでよ。何十人っているでしょ、その顔売って付き合ってる女が」

「……………」

「なんかしゃべりなよって。あれ?もしかして女をたらすのやめた?」

「やめてねぇーけど?」

「そこはハッキリ言うのか…」

「てかお前、顔あかい」

「そうだねーアンタが抱き着いたりしてるからねー」

「んだよ、中学のころは普通に………」



その瞬間、柚月の目の色が変わった———————。
キッと奏に振り返り、睨む。



「馬鹿ッッッッ!お互いにその話もうしないっていったじゃん!!!!!」


「—————っ。悪ぃ、つい思い出して・・・」



沈黙する時間————。

1分がすぎたあたりで、奏がしゃべりだす。


「ま、今のはなかったってことで!いつもどおり幼馴染であってそれ以上ではない関係!ってやつな」

「………うん」


なにか、自分の中にあった固い壁が、少し削れたような気がした。
同時に、異様な違和感。


「あーっと、さっきはごめんなー。今からはちゃんと俺も働くんで」

「あっそ。じゃあ一人で頑張って」

「うっそー!そこ『仕方ないなーそれなら私も』って雰囲気になんねーの!?」

「人生甘くないからねー。でも、今日ぐらいならいいや」

「まじ?うおっし」


———————奏の笑顔があったかい。

———————やっぱりこの関係でいるのが一番おちつく——。