コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

ESPガールアドベンチャー ( No.1 )
日時: 2013/03/25 15:28
名前: 岡井香 (ID: og1NzBie)

Ⅰ旅の始まりは
1
「はあはあ。」
ちらっと後ろを見た。
黒いタキシードの男二人組が、少し後を追ってくる。
「…しつ…こい…!」
肩で息をしながら言った。
煉瓦づくりの家が連なる住宅街。地面も煉瓦で、できている街。
路地裏に飛び込み、さらにまた曲がる。
大通りに出た。市がまだやっているらしく、とても賑やかでとても騒がしい。全力疾走で路地裏から現れた少女を、行き行く人達が珍しいものを見る目で見た。そんな視線に、微塵も気にした様子がない少女はまた全力疾走で人混みに紛れていく。その少し後に黒いタキシード二人組が現れ、行き行く人達を今度はギョッとさせた。そしてまた、人混みに紛れていく。
「…今日はいったい何なんだぁ…?」
野菜が沢山入った籠を担いだ男が、呟いた。

超能力が信じられている、今日。いつに時代にも金のためなら的な人が腐るほど、ではないがまあまあいる。そして彼らは、汚いことでも平気でする。
この世界には、五つの超能力の名家がある。ビクトリア家、マリンス家、ディノス家、ハマンズ家、そしてこの中で一番力が強いインティファン家。
皆、由緒正しい旧家。そして、今彼らは危機に瀕している。それは…
「我らの主のためにさっさと捕まれ、女!」
タキシードの男が叫び、周りを歩いている人達を、驚かせる。
そう、それは人身売買の危機。
私達は高く売れるそうだ。
私は、歯ぎしりして唸った。
「捕まれって言われて、捕まる馬鹿が、いるもんか!」
ああ、ここじゃろくに反撃ができない。
舌打ちして、一つジャンプする。家の屋根に着地した。
不思議の国のアリス風のスカートが風でなびき、天然パーマのかかった腰まである栗色の髪が風と遊ぶ。
タキシード二人組も、ジャンプして屋根にくる。
図体がでかいほうが、吐き捨てた。
「てこずらせやがて。」
風が吹き、緊張が走る。下では野次馬が集まり始めている。
このままじゃ、こいつらと終わりない鬼ごっこになってしまう。何か手は。
男達と睨みながら必死で考える。
そして。
おおっと、野次馬から歓声が上がった。
眉をひそめた瞬間、タキシード二人組が呻き声を上げながら倒れ屋根を滑り落ちていった。
おおっと言う歓声と、悲鳴が混じり合い耳障りな喧騒になる。
意識を急いで奴らを倒した者に、向ける。
新手か。
そしてそこには、私とあまり年が変わらないような少女が立っていた。