コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ESPガールアドベンチャー ( No.13 )
- 日時: 2013/03/27 23:04
- 名前: 岡井香 (ID: og1NzBie)
私はあわてて顔を、上げる。
誰か居るとは、思わなかった。独り言とか恥ずかしいっ!
言い遅れたが、私は空気使いだ。空気の微かな動きを感知し、空気の流れを自在に操る。つまり、人は完全に動きを止める事は不可能だから空気の流れで何人いるかもわかる。…はずだが、今日はわからなかった。
「…っかしなぁ。暑いせいかな。」
きっとそうだと頷く私に、恐る恐るという感じに「いらっしゃい」と言った人が声をかけてくる。
「あ…あの、お客様…?」
はっとして我に返る。
「いっ、いや、何でもありません。…すいませんでした。」
「はあ…」
相手はまだ怪訝そうにしていたが、追求をする事を諦めたようだった。
「はは…って、あれ?」
よく見ると、いつも話に聞く主人ではなかった。
「えっと、マーガレット…さん、今日は居ないんですか?」
「え…あ、はい。彼は、今日は風邪なのでお休みです。」
「そうなんですか。お大事にって、伝えといてくれませんか?」
「わかりました。」
「すいません。ありがとうございます。」
いえいえ、と女性は手を振る。
年は四十代後半か五十代前半、というところだった。目許には笑い皺があり、優しい印象を受ける。しかしなぜか、一方では冷え冷えとした印象を受ける。
「それで、今日はいったい何を買いますか?」
小麦粉屋は、小麦以外でもうっているのだろうか。
変な事言うなぁと思いつつ、アリスから預かったメモを取り出すためいったんしゃがむ。
その瞬間、頭上で空気が動いた事を感知した。頭の奥深くで、警鐘が鳴り響く。反射的に、後ろに飛び移る。
がつん。
固い何かが、ぶつかる音がする。
恐る恐る顔を上げると、今まで私が居た場所に大きな石が落ちていた。少し床にのめり込んでいる。
「え…」
絶句。
後ろで微かに、空気が動く。急いで振り向くと、そこにはさっきのおばさんが大きな石を持って立っていた。私を凝視するおばさんの顔に、にたりと薄気味悪い表情が貼り付く。急に、冷房が寒く感じじ、しぃぃぃんと、不気味な静寂が広まる。あんな石で殴られたら、死にはしないが気を失ってしまう。
おばさんが、両手を振り上げた。
「…!」
私も両手を挙げ集中し、ありったけに空気を集め見えない鉾を作る。
おばさんが石をこちらに投げてくる。
「…!こりゃ、おばさんの力じゃ無いぞ。何者なんだ、あのおばちゃん。」
相変わらず、薄気味悪い笑みを貼付けたままだ。
「マーガレットおじさんとやらには悪いが……」
今まで集めていた空気を、外の向けて勢いよく流す。
「建物ごと行くよっ!」
その瞬間。
どーん!
という、爆発音が響いた。