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ESPガールアドベンチャー ( No.19 )
日時: 2013/04/04 17:51
名前: 岡井香 (ID: og1NzBie)

人気がない通りにさしかかった頃、ルナはいきなり立ち止まった。
「どうしたの?」
怪訝そうに尋ねてくる私に、人差し指を口に当てしっと言ってくる。その顔はいつもに増して、緊張している。私もつられて緊張した面持ちになる。
しばらく立ち止まっていたが、いきなりルナは走り出した。
「えっ、待って!」
予測不能の行動に驚き、反応に遅れた私は数秒遅れて走り出す。その途端、後ろから追ってくる気配があった。
「まさか、追っ手!?」
ルナがそばにいるからと、今まで大人しかったから、全然空気の流れを読んでなかった。空気使いのくせに、空気の動きがわからないとか情けない…!
自分に嫌悪感を、抱く。
角を曲がり、私達は立ち止まる。
私が、曲がって来るであろう追っ手を待ちかまえるように仁王立ちをする。
いくつかの足音が近づく。一人ではないことが、わかった。
黒い物体が見えた瞬間、私は追っ手に空気の見えない鉾をぶつける。
「はああああっ!」
呻き声を上げながら、黒い塊がズルズルと倒れていく。
「…よしっ」
「いや、まだいる」
ルナが言った。
その言葉を合図にしたかのように、三人現れる。
「なっ…!」
すっかり気が緩んだ私は、とっさに動きを止めてしまった。
追っ手の手が目の前に来る。
どうしよう……!
そのとき。
「ちっ」
ルナが面倒くさそうに舌打ちをして、手を一文字に空気を切るように振る。
すると、どこからともなく水が現れ追っ手に凄いスピードでぶつかりに行く。
「ぎゃっ!」
「ぐっ!」
「がはっ!」
三つ、声が重なる。
追っ手が、後ろに五メートルほど飛んだ。
私は、およそ場にそぐわない声でそぐわないことを言った。
「…なんでぇ?水って、固くないじゃない。」
「水はスピードによって、コンクリートよりも固くなり弾丸のようになるときもある。本当に何も知らないんだな。」
「えへ。」
こんなんで頭に来ていたら、こいつとはつき合えない。
「…まだ、いるようだな…」
「うへぇ…面倒くさぁ…」
「誰のせいだ、誰の」
「好きで追われている訳じゃありません」
「何だか、色々とむか…なっ!」
ルナの瞳が愕然と、見開かれる。
「?何、どうした?」
全く状況がつかめない私は、聞くしかなかった。
ルナが何か呟いた。
と、いきなり走り出す。
「!ちょっ、待って!今度は何?」
「悪いが、別行動だ。一時間後に、奴らを巻いてここに集合だ。絶対巻いとけよ。一秒でも遅れたらおいてく。」
「はあ!?」
「じゃっ。」
「あっ、待てコラ!なにが守れるだ馬鹿ぁ!置いてかないでよぉ!」
半泣きしながら私も走りだそうとした。が、いきなり横の煉瓦の壁か爆発した。風圧で、何とかやり過ごす。
「なっ!」
そういや、まだ追っ手がいるって…
とにかく、
「逃げるが勝ちだぁ!」
私は、ルナが消えた方向に走り出す。
土煙の中から、タキシードが飛び出してきた。
「ちくしょー!ルナの裏切り者ー!」
あのときルナはなにを呟いたのか。私の頭からは、そんな事すっかり飛んでいた。