コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ESPガールアドベンチャー ( No.22 )
- 日時: 2013/07/26 01:52
- 名前: 岡井香 (ID: c7NU3l3g)
Ⅲ旅の途中で
1
ここで一つ、話したいことがある。
少し前に遡る。私とルナが再会したあとのことだ。
「やばいよねぇ…」
すっかり帰る時間が遅くなってしまった。
「絶対困っているよねぇ…」
昼間よりは暑さが和らいだが、未だにムシムシしている。あせばんで背中にくっついているワンピースが、すごく気になる。
入りにくく、玄関の前でうろうろしているといきなりドアが開き凄い形相のアリスが顔を出した。
「あっ…ただいま…じゃなくて…アリス…ごっ、ごめん…なさい…」
いきなりで驚き口がうまく回らなく頭も真っ白になった。
重い沈黙に耐えられず、黙っているアリスを見上げる。
そこには、涙を目にいっぱいためたアリスが居た。
「えっ…えっ!」
「…馬鹿!心配したじゃないのっ!馬車にでもひかれたのかと…ぐすっ…思ったじゃない…」
「あ…ごめんなさい…」
まさかここで泣かれるとは思わず、対応に困る。
「あっ、アリス…怒ってる?」
「当たり前じゃない、馬鹿っ!」
「…ごめんなさい…」
ぶっちゃけ言って、今まで親にこんな風にされたことがないためどう答えればいいかわからない。母親に至っては、怒られたことすらないが。
とりあえず店に入り、アリスをなだめる。
その間アリスはずっと、馬鹿っ馬鹿っと言っていた。
私にとって嬉しくもあり、また胸が痛む。
アリスにここまで、心配をかけてしまった…ああ、でもアリスを見ていると…
私は考えを頭から振り払うように、頭を振った。
どうして。
頭の中で問う声が聞こえる。
やめろ、考えるな。
もう一つ、聞こえる。どちらも私の声だった。
どうしてあの子は。
やめろ。考えても答えはでない。
どうして、私の親友は。
私の前から消えたの?
「マリア?」
アリスの声で我に返る。
いけない。もう忘れるって決めたのにな。
「どうしたの?マリア?」
アリスの心配顔が私をのぞき込んでくる。
大丈夫。今の私には、アリスがいる。
私は微笑む。
「何でもないよっ!」
「そう?でも悩んでいたら言ってね。これでも私達、友達なんだから。」
「うん…そうだね。」
その一言が、たまらなく嬉しい。
「じゃあ、この前の子にあったのね。」
「うん。」
「良かったじゃない。ずっと気になってたんでしょ?一緒に旅に行けばいいわ。」
「うん…でも…」
「それに、その変な組織をぶっ飛ばせば帰ってくるんでしょ?さんざん迷惑かけられたんだから、仕返ししてきなって!」
「でも、アリスが一人になっちゃう。」
「バカねぇ。私これでも大人よ。待っていられるわよ。」
私たちは、店の閉店後パン屋と繋がっているアリスの家のリビングで向かい合って座った。
一人は寂しい。そんなことは、嫌という程体験した。だからこそ、大切な友達を一人にすることに抵抗を覚える。
「アリス…本当に一人でいいの?」
「だーかーらー、大丈夫だって!それより何よ。あんたさっきから様子が変だよ。何、さっきのことまだ気にしてるの?らしくないねぇ。」
と言い、アリスはくすりと笑う。
私は無性に恥ずかしくなり、椅子とセットで買ったという木目調の机をバンバンたたいた。
「んなわけないしっ!私はただ、アリスが寂しいかなって配慮してあげただけだ。」
「やっさしい。」
アリスがお得意の意地悪な顔で、囃してくる。
「んなっ!別にあんたがどう思おうが私はどうでも良いけど、後でウジウジされると面倒だからであって…」
あれ?なんか聞いたことあるような…
「つまり私に、ウジウジさせたくないのね。可哀想だから。」
私はガタンッと派手な音を立てながら、椅子から立ち上がった。椅子は倒れたと思う。
「ああああんたっ!今の話の何処にそんなこと言ってたのよ!ちゃっ、ちゃんと聞いてなさいよ!」
アリスが含み笑いをしながら言った。
「まあまあ。あとマリア、顔すごいよ。今までない以上に赤い。」
「嘘っ!」
と言いながら私は頬に手を当てる。
「触ってもわからないと思うけど…」
面白くて堪らないという雰囲気で、アリスが私に手鏡を渡す。
そこには、耳まで真っ赤にした私が居た。
ふざけながらも、私は旅に行くことが決まった。