コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

ESPガールアドベンチャー ( No.28 )
日時: 2013/05/12 17:35
名前: 岡井香 (ID: og1NzBie)


ある宿場にて。
一室でマリアは手紙を書いていた。
因みに、宿代はルナが家を出るときに持ってきたというお金で払った。しかし、極力宿は使わないことにしている。
ここの宿は、異国なだけあって私たちにとっては珍しいものがたくさんあった。
洋服かけと申し訳程度の机が一つ、簡易ベットが二つある殺風景な部屋。
マリアは靴を脱ぎ早速手紙を書き始めた。
ルナも後から入ってくる。
「何をしているんだ?」
「マリアに手紙書いてる。」
「そんなついてすぐ、書かなくても大丈夫だろ?」
「駄目だよ。あのくそ暑い赤道線越えの時は、郵便すらない田舎だったから送れなかったんだもん。三週間も音信不通は心配すると思って。」
「まあ、確かにな。郵便すらないのは、さすがに驚いた。奴らも、すっかりなりをひそめていたし。」
「邪魔が入んなくて良かったよ。あんなとこでは戦いたくなかった。」
「む。確かにそれは同感だ。」
湿気が少ないからなあ、水が集めにくいだろうなあとかぼやいているルナを、私は完全無視し手紙を書く。
アリス、心配してるかなぁ。
ああ、でもなんだか、気にしてなさそうだな…
それはちょっと悲しいな…

「だが、本当に三週間も大人しかたったことなんてあったか?本当に諦めたのか…?」
手紙を書き終え、送るために風を集めているときだった。
「あり得ないっつたの誰?」
「私だ。」
「あれ…う、うん。意外に素直だね。お前だろ、とか言うのかと思った。」
「私はそこまで無責任か?」
「違った?」
「…もう、いい。」
「怒ってる?」
「……」
それ、と私は窓に向けて手紙を投げる。
落下するはずが、私が操作する風によって天高くヘ舞う。あとは、風が送ってくれる。
「落ちないのか、それ。」
私は天を舞っている手紙を見つめながら答えた。
「平気よ。」
「郵便を使えばいいじゃないか。」
「こっちの方が早い。」
「便利だな。」
ルナは苦笑しながら言った。
「さてと…」
私は、見飽きたといわんばかりに振り返りルナと向き合う。
「真面目な話、あとどれくらいで着くの?」
「ここは、ゴールドシティ。まんまだが、金がたくさん埋まっていてな…」
「うん、わかった。うんちくは後で聞くから。てゆうか、キャラが変わってるよ?」
「…目的地までは歩いて約一月くらい離れている。」
「そうか…じゃあさ、少しここにとどまってみない?観光気分でさ。」
「時間の無駄だ。それに、『じゃあさ』では繋がんないぞ。」
ルナが、全身で呆れたポーズを取る。
「だって、今までたくさんの国を通過したけど…本当に『通過』じゃない!それじゃ面白くないのっ!」
「面白い面白くないなどの問題じゃ、ないんだ。」
「例え旅でも、景色を楽しまなくちゃ無駄よ。それこそ時間の浪費よ。」
「む。お前の意見には一理ある。しかしだな…」
「でしょ?じゃっ、けってーい。」
「おい、こら。人の話を聞け。」
「んー?なにー?」
早速出かける用意をしている私を見て、ルナは盛大にため息をついた。
「わかったよ。今回だけだからな。」
「わーい。」
「…」
今まで呆れていたルナだったが…
ふっと、笑うと
「…まぁ、たまにはいいか…」と、呟いた。私は、玄関の前で立ち止まり振り返ると元気よく叫んだ。
「ほら、早くー。置いていくよ。」
「ああ、わかった。少し待ってくれ。」
開け放していた窓から、心地良い風が吹いてきた。