コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ESPガールアドベンチャー ( No.30 )
- 日時: 2013/08/19 17:30
- 名前: 岡井香 (ID: c7NU3l3g)
5「うわーっ!きれーい。」
「もう少し静かにしろ。騒がしい。」
「うはー。こんなきれいな景色初めて見た。」
小高い丘の上。町を一望できる。ルナのうんちくでは、最近は開発が活発らしいが自然は残されているらしい。
ただ、たくさんの住宅や店と森の…開発都市と自然のギャップが少し可笑しかったが、これはこれでありと思う。
「開発都市にしては、高いビルが少ないね。」
「そこまでな技術がないんだと。」
「ふーん。」
手短な椅子を見つけ、座ることにした。
木がさわさわと揺れる。
ルナがため息をつく。
「何?どうしたの?」
「いや。」
ルナは珍しく、クスリと笑った。
本当、笑うとかわいいんだけどなぁ。
「出会ったときと同じ感じだなって。」
「あー…うん、そうだね。」
「確か、人が声を掛けたら攻撃してきて…」
「わぁーーっ!もうやめて!反省してるからっ!」
本音を言うとルナの怒り顔より、そのあとのルナの説教が一番怖いのだが。
このまま何もなく着いちゃうのかな、目的地に。
少し強くなってきた風を、全身で感じながら私はふと思った。
別に何か起こってほしい訳じゃないが、何もないとつまらないと言うか…
「はあ…」
もっと漫画的なことを望んでいたのだが、人生そううまくなっていないようだ。
風が強く吹いた。その拍子に、髪を束ねていたリボンがほどけて飛んでいってしまった。
「あっ!」
私が立ち上がり、急いで取りに行く。
しかしリボンは、ふよふよ空を泳いでいる。だんだん高くなっていく。
「…もうっ!」
私は風の動きを変えて、リボンをこちらに持ってきた。
ぽとん。
足元に、無事着地。
私はため息をつきつつ、しゃがみ込んで拾う。
「よかった、よかった。」
顔を上げた瞬間、私の視界の隅に一人の女性が立っていた。
私は彼女に顔を向ける。
彼女は私ではなく、その後ろに視線を向けていた。そこにはルナが立っている。
「…ひ…り…ルナ」何か呟く。
風は、なぜか凪いでいた。