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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- ESPガールアドベンチャー ( No.33 )
- 日時: 2013/07/20 17:26
- 名前: 岡井香 (ID: c7NU3l3g)
目を瞑ればいつも、平和だったあのときを思い出す。
ーーーー「ミラ、ミラ!みてみて!」
振り向くと、とてとてと四、五歳の従姉妹が走ってくる。
ころぶんではないかと、はらはらしながら私は見守った。
「何?ルナ。騒がしいわ。転ぶわよ。」
「あのね、わたし、みずを集めるのね、速くなったよ!」
褒めて、褒めてと目が訴えている。
苦笑しながら私は、大切な従姉妹の頭に手を置きながらしゃがんだ。
「すごいわ、ルナ。さすが、私の自慢の従姉妹ね。」
あの子は、一片の曇りのない瞳をめいっぱい開いてキラキラさせた。
満足したような顔をして、今度はどこからか飛んできたアゲハチョウを追いかけ始めた。私は草の上に座り、あの子が怪我をしないように見守る。
あの子が歓声を上げながら、飛び回っている。その背景は、あのこの瞳と同じくらい輝いている空があった。
目を閉じれば、花の香りが混じった風が感じられる。「あミラ!」目を開くと視
界いっぱいに、あのこの顔があった。
驚いて目を見開いている私に、あの子は後ろに隠していた両手を私に差し出す。
「なぁに?これ。」
「あのね、」
照れたように差し出された小さな両手には、美しい野の花がちょこんと乗っていた。
「花……?」
「うん!あのね、あげる!」
ずっとこのままでいて。
そんな願いも虚しく、確実に平和な日は壊れていった。
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