コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

同じく、余命宣告から9日。 ( No.65 )
日時: 2013/06/19 21:05
名前: YuU【ゆう】 (ID: Pmy7uzC3)

霧原目線

『「来ちゃだめよ」
 
聞きたくない。聞きたくないよ。

「嫌だ・・・待って、母さん・・・」
 
俺は、必死に追いかけた。

 心臓の鼓動が、どんどん速くなる。
 口の中には、まるで鉄があるような味。
 体が鉛のように重い。

はぁ…っ、はぁ…っ…

辛い…辛いよ…

母さん、あたためて

「よく頑張ったね」

って、褒めてよ…ねぇ、行かないで…っ…

—ゴンッ。  』

夢の真っ最中…『ゴンッ』としか言いようがない音と共に
頭部に衝撃が走った。

霧「あぅっ!!?ちょっ・・・へっ!?」

美「あ、起きた」

目をあけると…容赦のない顔をした美明がいた。

「あ、あのさっ!?」

声を出すと、大声で裏返った声になる。

「あ、ありがとぅ」

はぁ?と、いった顔の美明に俺は慌てて訂正する。

でも、言っておきたかったのだ。

あの夢は、辛かった。起こしてくれて…嬉しかった。

「へ、変なの…あ、クッキーあるよ?食べる??」

顔を真っ赤にする俺を置いて、くっきーをとり俺に手渡す。

「ん…っ、うまっ!!」

「叔母さんに、もらったの」

「へえ〜!おひひいえ(おいしいね)、あひはとうっ(ありがとう)!」

「ははっ、何言ってるか分かんない〜」


かれこれ楽しく1時間程たったところで、美明は「じゃあね」と、ドアに手をかけた。

「うん、ばいばい〜」

俺は、手を振る。

—この背中は、何回見ただろうか?

毎日、俺は この背中に手を振り笑う。

『今日も君が来てくれた』

そんな些細で幸せすぎる事を噛みしめて…

「ん…へっ?」

美明は、くるりと振り返り こちらを見る。

「じゃ…じゃあねっ、輝!」

—ガラッ。

「……へっ?て、輝??」

美明は、そういうと急いで病室を出た。
え?何?どどど??

「ぁ…名前…っ…で…」

—美明が、俺の名前を呼んでくれた。

そんな事なのに・・・そんな些細な事なのに・・・

俺は、どうして こんなにも『嬉しい』んだろう。

俺の最期の心は

また新しい感情を芽生えさせた。