コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 偽装人間@000 ( No.19 )
- 日時: 2013/04/20 22:38
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
第1章 謎の少女
誰もが振りむくような美少女が1人、街のビルを見上げていた。睨むように、羨ましがるように。
「……ここ、ね」
小さく呟き、彼女はビルの中へと入って行った。
ビルの看板はたくさんあり、その中の一つにはこう書かれていた。
『長沢健一プロデュース新人女優発掘オーディション試験場』
ビルの中にはたくさんの少女たちで埋もれていた。このビルの7階では長沢プロデューサーが新人女優を育てるために開かれたオーディションで書類審査を受かった者だけが参加できる試験が行われるところだった。
「えー皆さんおはようございます。長沢と申します。今回の試験は簡単です。女優の仕事である演技をすれば良いのです」
そう長沢が言った途端、少女達にセリフが書かれた紙と拳銃が渡される。拳銃を渡され少女たちは明らかに動揺した。
「君達は少女警官の役です。他の人とは違う、素晴らしい演技をする女優を僕は望みます」
微笑みながら長沢はそう言った。
「今日は、審査員として若手俳優の戸松比呂君にもきていただきました」
そう言い、扉から若手№1俳優と呼ばれる戸松比呂が現れた。その瞬間、少女達は顔を赤らめ、隣と話し始める。
そんな中、一人だけ無表情で紙を見つめる少女がいた。比呂は一人だけ無反応な彼女を見て、少し興味を持つ。
「静かに! では、セリフを覚える時間として10分与えます。10分経ったら1番から来てください」
そう長沢が言うと、一瞬にして空気が変わり、真剣な雰囲気になる。この中から1人だけ新人女優として売り出す人材を選ぶのだ。
「……では、1番から始めてください」
「はい! 1番浜崎ゆいかです!」
そして、演技が始まる。
『……あなたは追い詰められたわ。もう逃げ場なんてない』
『私から逃げることなんて不可能なのよ』
自信に充ち溢れた表情で拳銃を向ける演技をする。
「……次の人どうぞ」
「はい、2番吉田咲葉です」
同じセリフを彼女は睨みつけながら言う。
その後、何人もの演技が続く。
途中、10分間の休憩が入った。
「……なんか皆同じでつまらないですね」
「あ、比呂君も感じたかい?」
5人の審査員が集まって話す。
「期待できる子がいないんだよなあ……」
きっちり10分後、試験は再開された。
「では……35番の方からどうぞ」
「……35番、菊川澪です」
比呂は彼女の演技に少し期待した。澪は先程無表情でセリフを覚えていた少女だ。あれだけ真剣に覚えていれば何か皆と違うのかもしれない、そう感じたのだ。
比呂は澪の演技を見て不思議に思った。彼女もありきたりな演技をしていた。長沢は呆れたように次の番号を呼んだ。澪はさっさと帰っていく。だが比呂はその背中を呼びとめた。
続く