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- Re: 偽装人間@000【アンケートご協力して頂けたら嬉しいです】 ( No.224 )
- 日時: 2013/06/17 18:17
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
第7章 少女の母は天才である
「……やーめた」
その言葉と同時に颯は澪の身体から離れる。
「俺のことを好きにならせてから頂くよ」
意地悪そうに微笑み、そう言った。颯は立ちあがり、キッチンの方へ向かった。
「……いいかげん話してくれますか」
「分かったよ、じゃあ、そこに座ってて」
澪はテーブルの方へ向かい、椅子を引いた。
数分後、ケーキとお茶を颯は持ってきた。
「……そろそろ話そうか」
言葉を切った。澪はあえて何も言わなかった。
「藤本理央は……俺の母さんの知り合いだったんだよ。もう、いないけどな。だから、俺と君は子供のころ何度か会っていた。俺の方が一つ年上だったけど、君は大人びていて不思議なオーラを出していた。似てる、と思ったよ、君のお母さんとね」
澪は無言で聞く。
「藤本理央さんが亡くなった後、君はお爺さんに引き取られたらしいけどそこで言われたんでしょ? お爺さんの知り合いに」
「……何をですか」
澪が口を開く。
「『心が空っぽ』だと」
その瞬間、澪の瞳に動揺の色が現れる。
「あったよね、藤本理央の名前が世間に広まるきっかけとなったドラマ……『♯000telepathy(テレパシー)』その中で『橘恵梨花』を演じた藤本さん……」
颯は一口お茶を飲み、喉を潤す。
「まさか、それが嫌みとして言われるとはね」
「……思ってなかったですよ。それに、私にとってそれは褒め言葉ですし」
クスリと颯が笑う。
「確かにそうかもしれないね」
「俺が話せるのはこれくらいだ」
「ありがとうございました。昔、会っていたのですね、私達」
「そうだよ、だから澪が俺のこと忘れてて少しショックだったんだから」
澪は顔色を変えずに「馬鹿」と言い捨て、颯の部屋を後にした。
張り巡らされた細い糸。
糸が繋がり、解かれた時、物語は幕を閉じる——。
第7章 完