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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 偽装人間@000【8章、幕間、最終章1、色々更新しました】 ( No.275 )
- 日時: 2013/07/07 16:57
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
最終章 菊川澪という女優
澪は社長室を出ると、ため息をつき、言った。
「——それで隠れていたつもりなんですか? 戸松さん」
一瞬、沈黙が訪れる。
だが、がたん、と音がし、扉の後ろから比呂が現れる。
「き、気付いてたんだ?」
気まずそうな顔をしながら比呂が現れた。
「——聞きたいことがあるのならどこかへ行きますか?」
その澪の言葉に比呂は心底動揺した。
「……珍しくない? 澪ちゃんがこうやって誘うとか」
「……そうですか?」
アイスコーヒーを飲みながら澪は言う。
「……藤本理央の娘、なんだ?」
「……そうですよ、それが何か?」
比呂は納得がいった。
澪が風邪をひき、部屋に入った時に見た写真には作り笑いをした澪が映っていたからだ。
「世間に公表するの?」
「隠すつもりはないですけど……言うつもりもありません。ばれたらそれはそれで良いです」
あくまでも淡々と話す。
「……ただ、私の演技は親のおかげだとかは言われたくないので……」
そう言うと、比呂は一瞬、きょとんとし、静かに笑った。——不敵な笑みで。
「そんなこと、皆が絶対思わない方法があるよ」
「え?」
珍しく、澪が動揺する。
「だって、澪ちゃんは澪ちゃんだし……」
一旦、言葉を切る。
「『菊川澪』という天才女優でしょ?」
澪は比呂の言葉に笑う。
澪の笑う姿に比呂は眼を丸くした。
「……それ、なんの意味もないと思いますよ」
「——ありがとうございます」
澪が微笑みながら言った。
それにつられるように比呂も笑った。
空っぽの心を埋めるために。
——少女は今日も偽装する。
偽装人間@000 完
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