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Re: 偽装人間@000【第1章更新中】 ( No.43 )
日時: 2013/04/21 16:05
名前: 朔良  (ID: 2IhC5/Vi)

        第2章 お騒がせ少女

 家で寝ている時、携帯が鳴った。めんどくさそうに少女は電話に出る。
「……はい」
『あ、澪ちゃん? 長沢ですー。今日○○スタジオに来てね! 時間と地図はメールで送るからー』
「……なんでで」
 なんでですか、という言葉も言い終わらない内に電話は切れた。すぐメールが来る。携帯番号とアドレスは書類選考の時に見ているはずだ。だから番号は知っててもおかしくない。でも急すぎではないだろうか、と澪は思った。
 のそのそと起き上がり、支度を始める。
 待ち合わせ時間は午後2時。現在10時。澪は「起きるの遅いだろう」と言われても無理やり反論するであろう。

 きっかり午後2時。澪はスタジオに入った。
「あ、澪ちゃん! 待ってたよー」
 長沢が笑顔で澪を迎える。
「じゃあ紹介します!」
 澪の腕を引き、大勢のスタッフの前に立たせる。澪は無表情だが、心では何が起こったのか不思議に思っていた。
「この子、僕がプロデュースするオーディションに合格した菊川澪ちゃん、15歳です!」
「15歳?! 随分大人っぽいんですね……」
 スタッフがざわざわし始める。
「じゃあ、澪ちゃん挨拶して」
 長沢に言われる。が、澪は今この場で自分が合格したのだと知ったのだ。挨拶も何もない。
「……菊川澪です。よろしくお願いします」
 無表情で言ったからだろう。スタッフ達は怪訝そうな顔をする。
「この子演技はすごいから! もう……口では言えないね」
 長沢はあの瞬間を思い出しながら頷く。
「……あの、これ何するんですか?」
「あれ、説明してなかったけ?」
 ……されてないです、という気もなくなった。
「CМ撮影だよ。トリートメントのね」
 そこへ戸松比呂が現れる。
 比呂は澪の腕をつかみ、引っ張って行った。
「あっちで準備するから来て」
 
 長沢達がいる部屋を出て、澪は比呂に聞いた。
「……なんで私なんですか」
「え? 嬉しくないの? 合格できて」
「質問に答えてください」
 澪の視線に比呂は答えた。
「俺が猛プッシュしたんだよ。君のこと」
 澪は驚いたように目を見開く。
 どうして、と発言しようとする澪を制し、比呂は話し始める。
「今日はCМ撮影。でも君は出演できるか分からない。もう一人超新人女優の子と対決みたいなもんかな。上手い方が出演できる」
 簡単に今日のことを説明する。
 わざわざ「超」と付けるのは比呂の黒いところだ。
「落ちるなよ? 俺のメンツもかかってんだから」
「……でも私の演技は……」
「大丈夫。澪ちゃんは好きに演じればいいから」
 安心する笑顔で比呂が澪に言う。
 その言葉に表情には出さないが澪は少し喜びを感じた。
「……何で呼び捨てしてるんですか」
「だって1つ年下だし」
「精神年齢という言葉を知っていますか」
 そんなことを言い争い、比呂はさっきのスタジオへ。澪はメイク室へと入って行った。


                           続く