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- Re: 偽装人間@000【幕間&第3章更新中(演劇+恋愛物)】 ( No.84 )
- 日時: 2013/04/21 15:43
- 名前: 朔良 (ID: 2IhC5/Vi)
第3章 少年突撃2
理性を失ったかのように比呂は澪を抱きしめた。優しく、包み込むように。
「なにしてっ……」
そう澪が言った途端、澪の体は色々な意味の熱でよろめき、ベットに倒れ込んだ。
「もう……なんでここまでしないと寝ないのかなー」
比呂は呆れながらそう言い、倒れ込んだ澪に毛布をかけた。
「い……」
澪がなにか呟いたのに気付き、比呂は耳を寄せた。
「行かないで……お母さん……」
「え……」
泣きそうな顔で澪が呟く。そう呟いた瞬間眠ってしまった。
「お母さんて……そういえば、澪ちゃんご両親は……?」
ふと根本的なことに気付いた。女子高生がこんなマンションで一人暮らししているというのだから、かなりの大富豪かもしれない、と比呂は感じた。
その時、棚の上にあげられた写真に気付いた。
写真には、『入学式』と書かれた札の前で微笑んでいる澪と母親らしき人物がいた。
フレームを手に取り、比呂は顔を曇らせながら言った。
「……澪ちゃんは本当に演技がうまいな」
そっと比呂はフレームを戻した。
その後、澪が目を覚まし、比呂が帰ろうとした時聞いた。
「澪ちゃん、ご両親は?」
「え? ……なんでそんなこと聞くんですか?」
「いや、こんなマンションに一人暮らししてるから気になっただけ」
澪は相変わらず無表情で言った。
「……市外に住んでいます。それがなにか?」
「……そう」
比呂は納得したかのように頷いた。
「じゃあ、安静にしなよ」
「はい。……ありがとうございました」
比呂はにっこり微笑み、去って行った。
帰り道、ずっと考えていた。
『行かないで……お母さん……』という言葉のことを。
市外に住んでいる母親にそんなこと思うだろうか?しかも高校生が。
その他に、フレームの澪と母親らしき人物との写真。比呂でも分からなかったかもしれないぐらい、うまくつくれていた笑顔だった。
「……あの子にも事情があるのかな」
比呂はそれ以降、無心で歩いた。
第3章 完