コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 偽装人間@000【幕間&第4章更新中(演劇+恋愛物)】 ( No.97 )
日時: 2013/04/23 18:49
名前: 朔良  (ID: 2IhC5/Vi)

      第4章 少女は世に知れる。

 相楽千尋。澪の唯一の友達と言っても過言ではない。
「……冷たい? どこが。関わりたくない人間と関わったってメリットがないでしょう?」
「ったく……ひねくれ者なんだから」
 呆れたように笑いながら澪の頭を少し撫でる。

「……千尋。私、転校することになったから」
「転校?! そりゃまた何で?」
 千尋は心底驚いた顔で澪を見つめた。
「芸能科のある高校へ行った方が良いってプロデューサーに言われたの。2週間後にはもう行く」
「……なんかもう本当に芸能人なんだねえ」
 澪も千尋も不器用で、寂しさは露わにしない。ただ、分かるのだ。お互い寂しがっている、でも大丈夫という思いが。
「そこの芸能科って……どんな人が通ってるの?」
「……戸松比呂、瑞葵由香里、三崎真澄とか……? あと、藤本理央も卒業生」
「……へえ。藤本理央も」
 天才女優、藤本理央。26歳の若さで亡くなってしまい、悲しみは世界にまで広がった。女優なら誰もが憧れる人物だ。

「ま、そっちでも頑張りなよ」
「……ありがと」

 そんな会話をし、今日一日人気者になった澪。
 そして、今まで以上に澪が世に広まるきっかけとなることが起こる。

「……ドラマ?」
『そう! CMを見て澪ちゃんを気に入ったプロデューサーがいるんだ。それで、スペシャルドラマに出演しないかって話が事務所に届いたんだよー』

 電話で長沢に伝えられたのはこの話だった。
 澪がもっと世に知れるにはうってつけの話だ。

『タイトルは「月に疼く」。簡単にいえば恋愛物だね』

『澪ちゃん、これは賭けだよ。君の演技が世にどう思われるか。ここから道が分かれていくんだ』
 そんな不安になるような言葉を聞いても澪は動じない。それどころか、心のどこかで楽しいと思っている。
「……私は、私の演技をします」
 そう言った直後、長沢が微かに笑う声が聞こえた。
『その調子』

 菊川澪の女優生命を決める、運命の作品となる「月に疼く」。
 開演まで、もう少々お待ち下さい—……。



                           第4章 完