コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 広報部の青春な日々 ( No.19 )
- 日時: 2013/04/14 17:32
- 名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: eVCTiC43)
10「おれたちの青春の結晶だからな」
「あと五十七冊よ!」
バサッ、バサッ、と、紙同士が擦れ合う音が部室に響く。
今日は辰巳タイムス発行日の三日前。綴じ込みの作業を行っているのだ。
これがかなり重労働だった。千枚は軽く越える紙を半分に折り、とじ込む。これを全て手作業で行うのだ。
平日のため、メグミとミレイはいない。俺たち四人で、おとといから進めている。
「っ!」
不意に、ユイトが紙で指を切った。じわり、と血が滲み出る。…これで三回目だ。
「すいません、手洗ってきます」
絆創膏を持ち、ユイトは部室を出た。
俺は自分の指を見た。すでに、右手の二本の指に絆創膏が巻き付けてある。
先輩曰く、「最初のうちはよく指を切る」とのこと。
広報部の仕事は決して楽ではない。
だが、やりがいはあるし、なんだかんだ言って部員も楽し——
「ねえ見て!サッカー部がイ〇ズマイレブンごっこしてるわ!」
「シリアスな雰囲気ぶち壊されたあああああ!!!!」
俺は紙の上に倒れ込んだ。
「え?どうしたのキョウ?」
「なんでもないれす…」
くっそ、サッカー部め。イナズマイ〇ブンごっこめ。
トモ先輩が作業しながら言う。
「メイ、仕事もしてくれよ」
「ごめんごめん!」
すぐに作業に取りかかるメイ先輩。
「そうよね…全員がまとまらなくちゃ、作る意味がないものね…」
「メイ先輩…」
「ああ、辰巳タイムスは、おれたちの青春の結晶だからな」
「トモせん…」
「大ニュースです!水道にトンボのお墓がありました!」
「またかよおおおおおおおおおおおおお!!!!」
またもや雰囲気崩壊。
「え?もしかして前にもお墓あったの?」
「そっちのまたかよじゃねえよ!どうせ何かの悪ふざけだろそのお墓!」
「いや、悪ふざけの領域じゃないんだよ!トンボの死骸を小石で囲んで、正面の大きな石に『蜻蛉之墓』って彫ってあったんだぜ!すごくね!?」
「逆にすげえわ———————!!!!」
はっとして先輩たちの方を向く。
「こいつあの真面目な雰囲気ぶち壊しましたよ!先輩からも何か言ってやって下さい!」
「よし!それ次のニュースにするわよ!」
「謎の団体『埋葬部』動き出す、か…」
「らめええええええええええええ!!」
…このような感じで続けた結果、綴じ込み作業が終わったのは、部活終了時間の五分前だった。
「よーし!オワター!」
「ご苦労だった」
「あとは配るだけですね!」
「疲れたよもう…色んな意味で…」
仕上がった広報を棚に入れ、今日の部活は終了した。
そして帰り際。
「ホントだ…マジで本格的だよこのお墓…」
俺とユイトは『蜻蛉之墓』を眺めていた。
「やっぱりこれは埋葬部の仕業かねぇ」
「いやそれはトモ先輩の想像だから。そんな暗黒な部活、どこの学校にあるんだよ。さ、行こーぜ」
「ああ」
…その時、俺たちは知りもしなかった。
暗黒の部活が動き始めていたなんて。