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Re: 広報部の青春な日々 ( No.24 )
日時: 2013/04/20 16:38
名前: 瑞咲 ◆7xuwBG6R9k (ID: eVCTiC43)

 14「オレたち一位になっちゃいましたね」



 天気は快晴。風も穏やか。絶好の運動日和な六月初旬の午後。
 今日は待ちに待ってはいないが辰巳高体育祭だ。

 想像以上に盛り上がった午前の部、午後の部前半は終わり、残るは部活リレーと団対抗リレーのみとなっていた。
 皆がワイワイしている中、残りの両方に出る俺は、非常ぉぉぉぉに緊張していた。

「どーしたんだキョウ!そんなにがっかりして!」
 俺と同じく両方出るユイトがテンション高めに言う。

「がっかりじゃねえよ!緊張してんだよマジで!」
「ああ、プレッシャーで?」
「うん…。あと部活リレーは俺たちが二回走るし…」
 自分のマイナス思考が恨めしい。

 と、そのとき、聞き覚えのある声がした。
「キョウー!ユイトー!そろそろ部活リレーの召集よー!」
 メイ先輩がトモ先輩を連れて現れた。

「っと、そうでしたね。キョウ、行こうぜ」
「うう…」

 さらに緊張しまくる俺に、トモ先輩が耳打ちした。
「キョウ、そんなに緊張しなくてもいいぞ。全力で走れば、メイはビリになっても怒らないからな」
「そうなんですか?」
 直後は驚いたが、よくよく考えてみれば納得できた。
 メイ先輩は勝ち負けにはこだわらない。逆に俺たちのやる気は重視している。

「さ、行くわよ!二人とも、二回ダッシュ頼んだわよ!」
「「はい!」」
 俺たちは召集場所へと駆け出した。


 部活リレーは、特別な事情を除き、全ての部活が参加することが義務づけられている。
 全ての部活が一斉に走ると渋滞してしまうため、運動部と文化部それぞれ二グループ、四回に分けて走るのだ。

 そして、バトンのかわりに、部活に関係する物を使う。例えば、サッカー部だったらサッカーボール、柔道部だったら黒帯のタスキ、といった感じだ。
 広報部は丸めた辰巳タイムスかと思いきや、「広報部☆部員募集中\(^o^)/」と書かれたやけにでかいプラカードだった。これを使うのが伝統らしい。

 運動部Aグループがスタートした。広報部は文化部Bグループ。一番最後のスタートだ。
「今のところ、やはり陸上部がトップです!だがプラスチックのバッドを繋ぐ野球部も負けてません!」
 放送部のアツい実況が響く中、運動部員は走る走る。

 ラストで野球部がトップになり、ゴール。
 続く運動部Bグループはバスケ部、文化部Aグループは演劇部が一位に輝き、ついに文化部Bグループの番になった。
 Bグループは広報部の他に、吹奏楽部、美術部、漫研などがいる。

 ユイトがスタートラインに立つ。実はこいつ、スタートとゴールを務めるのだ。ちなみに、俺は二番目と五番目、メイ先輩が三番目、トモ先輩が四番目だ。
「位置について、よーい…」
 パァン!
 高らかに銃声(と言ったほうがかっこいい)が鳴り響き、スタート。

「ユイト行っけえええええええ!!!!」
 思いっきり叫ぶ。足の速いユイトはかなりのスピードだが…吹奏楽部と漫研が速ええ!

「キョウ————!!」
 間もなくユイトのバトン…プラカードを受け継いだ。
 全力で走る。…しかし、残り二十メートルあたりのところで、おもちゃのマイクを持った放送部に抜かされてしまった。

「くっ…!メイ先輩!」
「キョウ!」
 メイ先輩にバトンパス。

「メイ先輩速えええええ!!」
 あっという間に放送部を抜かし、漫研も追い越してしまった。…恐るべし。

「トモ!」
 トモ先輩にバトンパス。
 遅くはないが、漫研に追い付かれそうになる。
「トモ先輩ファイト!!」
 しかし、先輩はなんとか抜かされずにすんだ。

「キョウ!頼んだ!!」
 再び俺の番だ。
「抜かされてたまるかあああ!!」
 さっきよりも全速力で駆ける。そして、漫研を大きく引き離し、吹奏楽部に追い詰めることができた。

「ユイトおおおお!!」
「キョウ!!」
 アンカーのユイトが二回目のスタートをきった。

「ユイトいっけえええええ!!!」
 さっきよりも確実に速く走る。

 そして…ついに吹奏楽部を抜かし…ゴール!

「一位は広報部です!」
「よっしゃ——!!」

 ユイトの元に駆けつける。
「やったな、ユイト!」
「キョウのお陰さ。さんきゅ!」
 ハイタッチを交わす。そこに、メイ先輩とトモ先輩もやってきた。

「二人とも、よくやった」
「見事だったわ!」
「先輩もお疲れ様です」
「オレたち一位になっちゃいましたね!」

「これでこそ広報部よ」
「次の特集はこれにしよう」
「「はい!」」

 今度は四人でハイタッチした。


   + + +


 その様子を、離れたところから見ている生徒がいた。
「……」
 生徒は何か呟くと、くるりと背を向けて歩き出した。

 彼の真っ白な髪が、日光を浴びて煌めいた。